庄野潤三の世界

アメリカ留学体験を綴った庄野潤三「ガンビアもの」作品(長篇・短篇・随筆)

僕は、庄野さんの作品の中でも、アメリカ留学時代の体験を素材にした、いわゆる「ガンビアもの」が大好きなんですが、長篇はともかく、短篇小説まで含めると、ガンビアものの作品がどのくらいあるのか、よく分かっていません。

今回は、庄野さんの作品の中から「ガンビアもの」と呼ばれるものを、まとめて整理してみたいと思います(主に自分のためです)。

概要

庄野さんが千壽子夫人とともに、アメリカ・オハイオ州ガンビアにあるケニオン大学へ留学したのは、1957年(昭和32年)9月のこと。

昭和30年に芥川賞を受賞したばかりの庄野さんは、このとき36歳。

将来有望な新進小説家の一人として、ロックフェラー財団の資金によりアメリカでの暮らしを体験することとなったのです。

三人の幼い子どもたちが暮らす石神井公園の自宅では、千壽子夫人のお母さんが留守宅を預かることとなりました。

翌33年8月に帰国するまで、庄野さんはガンビア村を拠点としながらアメリカ国内を旅行し、当時の体験を多くの作品として残しました。

今回は、庄野さんが発表した作品の中から、単行本として刊行されているものを整理しておきたいと思います。

長篇小説

アメリカ留学を題材とした長編小説は、全部で3作。

このほかに、後年ガンビアを再訪した際の体験も作品化されています。

ガンビア滞在記(1959)

帰国の翌年に、中央公論社から書き下ろしで刊行された長編小説。

現在に至るまで、おそらく、日本で最も詳細なガンビアのガイドブックになっていると思われます。

アメリカだからといって特別なことを描くわけではなく、大学村での暮らしを伸び伸びと綴っているあたりは、さすがに庄野文学といった感じの名作です。

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シェリー酒と楓の葉(1978)

雑誌「文学界」での発表は、前年(1977年)で、単行本は1978年になって文藝春秋から刊行されています。

ガンビアに到着してから、その年の大晦日(昭和32年12月31日)までの暮らしぶりが丁寧に再現されています。

『ガンビア滞在記』のような解説は少なくて、より日常生活を仔細にスケッチした作品となっています。

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懐しきオハイオ(1991)

1989年から1991年にかけて、「文学界」に長期連載されました。

庄野さんの作品の中で、最も枚数の多い作品として知られています。

『シェリー酒と楓の葉』の続編で、昭和33年1月1日から帰国するまでの日々が、まるで日記や随筆のようなスタイルで、軽やかに綴られている作品です。

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ガンビアの春(1980)

1978年、庄野さんはケニオン大学の招きを受けて、20年ぶりにガンビアを再訪しています。

『ガンビアの春』は、その時の体験を素材にした作品で、1978年から1980年にかけて「文芸」に連載されました。

紀行小説にケニオン大学の歴史紹介なども加わっていて、『陽気なクラウン・オフィス・ロウ』に近いカテゴリーの長編小説となっています。

※今回は「ガンビアもの」の番外編として紹介しました。

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短篇小説

ガンビアでの暮らしを、庄野さんは多くの短篇小説として発表しています。

作品集に収録されていないものも多いようですが、今回は、単行本化されているものを発表の年代順にまとめておきたいと思います。

イタリア風(1958)

「文学界」発表後、作品集『静物』(1960、講談社)に収録されました。

日本で知り合ったアンジェリーニ氏をニューヨークまで訪ねる物語。

初期庄野文学の特徴である<夫婦小説>の傾向が強い作品となっています。

南部の旅(1959)

「オール読物」発表後、作品集『道』(1962、新潮社)に収録されました。

遠距離バスに乗って、アメリカ南部のニュー・オーリンズへ旅行したときの体験が描かれています。

シリーズの中では珍しく、アメリカにおける人種差別が顕著に描かれた作品です。

ニューイングランドびいき(1959)

「婦人画報」発表後、作品集『旅人の喜び』(1963、河出書房新社)に収録されました。

日本からアメリカへ向かう船の中で親しくなったウィンタースティーン一家との交流を描いた作品。

庄野夫妻は、アメリカで再会したウィンタースティーン夫妻と一緒に、カナダ国境まで旅をします。

静かな町(1959)

「別冊小説新潮」発表後、作品集『道』(1962、新潮社)に収録されました。

「南部の町」の続編で、ミシシッピー州ナチェッツに宿泊したときの体験が描かれています。

話し方研究会(1959)

「別冊小説新潮」発表後、作品集『休みのあくる日』(1975、新潮社)に収録されました。

マウント・ヴァーノンで暮らすエランゲル氏の「話し方研究会」に招待されたときのことが綴られています。

ケリーズ島(1960)

「文学界」発表後、作品集『道』(1962、新潮社)に収録されました。

二つの家族(1961)

「新潮」発表後、作品集『道』(1962、新潮社)に収録されました。

ガンビア近郊で暮らす二つの農家の暮らしぶりを対比的に描いた作品です。

マッキー農園(1961)

「文学界」発表後、作品集『道』(1962、新潮社)に収録されました。

大学関係者以外で親しくなったマッキー氏との交友を描いた作品です。

花(1961)

「小説中央公論」発表後、作品集『休みのあくる日』(1975、新潮社)に収録されました。

ガンビアの隣町であるマウント・ヴァーノンに住むキニー夫妻とビビイ夫妻を、夕食に招待したときのエピソードが綴られています。

グランド・キャニオン(1961)

「風景」発表後、作品集『絵合せ』(1971、講談社)に収録されました。

船でサンフランシスコへ到着した後、庄野夫妻は鉄道を利用して、サンフランシスコからロサンゼルス、ロサンゼルスからグランド・キャニオンを経てシカゴ、シカゴからオハイオ州コロンバスまで移動します。

本作は、ロサンゼルスからグランド・キャニオンまでの旅行を描いた作品です。

写真家スナイダー氏(1962)

「風景」発表後、作品集『絵合せ』(1971、講談社)に収録されました。

着物姿の千壽子夫人が写真のモデルになる物語です。

庄野夫人の写真は、展覧会で入選したそうです。

湖上の橋(1968)

「文学界」発表後、作品集『小えびの群れ』(1970、新潮社)に収録されました。

「南部の旅」「静かな町」に続く、<アメリカ南部 遠距離バスの旅・三部作>の完結編。

9年ぶりに復活した遠距離バスの旅シリーズでした。

父母の国(1969)

「婦人之友」発表後、作品集『絵合せ』(1971、講談社)に収録されました。

ハワイから来ていた二人の日本人二世の学生(トムとロドニイ)の物語です。

庄野夫妻を乗せた帰国の船が、ハワイに立ち寄る場面で終わっています。

砂金(1974)

「群像」発表後、作品集『休みのあくる日』(1975、新潮社)に収録されました。

マウント・バーノン劇場で観た映画のことを思い出す物語です。

映画館では、ロドニイの友人が臨時の映写技師として働いていました。

モヒカン州立公園(1980)

「群像」発表後、作品集『屋根』(1980、講談社)に収録されました。

ニコディム夫人など、親しい人たちと一緒にモヒカン州立公園を訪れたときのエピソードを綴っています。

随筆

庄野さんのアメリカ体験を綴った作品は、多くの随筆集にも収録されています。

随筆作品は数が多いので、ここでは随筆集ごとに、主な作品だけを拾っておきたいと思います。

自分の羽根(1968)

・ガンビアの正月(風報)
・散髪屋ジム(群像)
・ランサムさんの思い出(学燈)

庭の山の木(1973)

・アメリカの田舎道(高速道路)
・ウィルソン食料品店(中部日本新聞)
・あらいぐま(プラス)

イソップとひよどり(1976)

・米と醤油(日本経済新聞)
・オハイオの新聞(週刊読書人)
・アメリカの匂い(産経新聞)
・サザン・パシフィック鉄道(JREA—日本鉄道技術協会)

御代の稲妻(1979)

・オハイオから(日本経済新聞)

 

ABOUT ME
じゅん
庄野潤三生誕100年を記念して、読書日記ブログを立ち上げました。庄野潤三さんの作品を中心に、読書の沼をゆるゆると楽しんでいます。