読書コラム

【息抜きに】昭和のエンタメ系文学作品 おすすめ17選

昭和時代に人気だったエンタメ系文学作品を集めてみました。

難しいことを考えずに、小説を読みたいにときにおすすめ。

ユーモア小説からアンモラルな問題作まで。

昭和の時代背景を感じるのも楽しいですよ。

石坂洋次郎「青い山脈」(昭和22年)

戦後日本の幕開けを告げるベストセラー小説です。

高等女学校の女子高生と女性教師を中心に繰り広げられる青春物語。

男女同権や民主主義など、新しい時代の息吹を感じます。

昭和24年には、原節子主演で映画化されました。

二人はときどき顔を見合せては、意味もなく微笑した。向き合って見ると,新子は、もう女学生の服が無理なほど、大人びて来ていることが分った。陽にやけて、スベスベした面長な顔立ちで、黒い目の光には、なにか熟しかけてるものが感じられ、鼻柱の線が強くまっすぐで、くちびるがわざわざくっつけたもののようにうす赤く厚ぼったい。(石坂洋次郎「青い山脈」)

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大佛次郎「帰郷」(昭和23年)

時代小説で有名な大佛次郎の現代モノ長編小説です。

価値観を見失った敗戦後の日本で生きる人々の混乱を描いています。

戦後の大衆文学を代表する名作として、今なお高い評価がありますね。

昭和25年、佐分利信と木暮実千代の主演で映画化されました。

「君はつくづくと変な女だなあ」風を受けた花が揺いで匂うように左衛子は急に笑顔を開いた。湯上りの上に念入りに夕化粧した顔は皮膚が底光りしているような感じで、大胆な調子であった。「覚悟はしてまいりました。お気のすむようになさって下さいまし」(大佛次郎「帰郷」)

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獅子文六「てんやわんや」(昭和24年)

戦後の流行作家・獅子文六のユーモア長編小説です。

戦犯としての摘発を逃れるため、社名で愛媛県へ身を隠したサラリーマンが巻き起こす、笑いと恋のドタバタ劇。

戦後間もない日本の風俗が、詳しく描かれていて楽しい。

昭和25年、佐野周二と淡島千景の主演で映画化されました。

「君、ちょっと、頼みがあるが…」先生は、壁際の鉄製書類ケースの前に立ち、ポケットから鍵を出して、扉を開けると、厳重に麻糸で括った、尺余の厚い紙包みを取り出した。「これは秘密書類じゃが、君、四国へ持っていって、保管してくれんか。こういうご時世だから、何人も、いつ家宅捜索を受けるかも知れんしね」(獅子文六「てんやわんや」)

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源氏鶏太「向日葵娘」(昭和27年)

高度経済成長期のベストセラー作家、源氏鶏太の人気作品です。

大阪北浜の会社に就職した新人OLの奮闘記。

作者は「ユーモア小説」や「サラリーマン小説」の名手として知られています。

昭和28年、有馬稲子の主演で映画化されました。

「やッ、実に、すまんです」弁慶さんは実に嬉しそうに、恐縮してくれる。もし、お茶をいれることも、仕事のうちだとしたら、入社一か月目の節子さんが、自分から積極的にやれることは、これだけであった。(源氏鶏太「向日葵娘」)

獅子文六「珈琲と恋愛」(昭和28年)

人気作家・獅子文六の恋愛ユーモア小説です。

お茶の間の人気アイドルが織りなすドタバタ恋愛劇場。

テレビが普及しつつあった時代の、コーヒーをめぐる物語が楽しい。

初出時は「可否道」というタイトルだったそうです。

彼女のいれたコーヒーは、まったくウマい。色といい、味といい、香りといい。絶妙である。そのくせ、彼女は、コーヒー豆や道具にこらないし、いれ方にも、煩いことをいわない。ほんとに無造作である。まず、生まれながらのコーヒーの名手というのであろう。(獅子文六「コーヒーと恋愛」)

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石原慎太郎「太陽の季節」(昭和30年)

東京都知事を務めた作家、石原慎太郎のベストセラー小説です。

不良少年が、ナンパした女性を妊娠させてしまうまでの物語。

「太陽族」という言葉が流行するほどの社会現象に。

昭和31年、南田洋子と長門裕之の主演で映画化されました。

作者の弟である石原裕次郎は、この作品で俳優デビューしています。

毎夜十時にもなると、西村の別荘に集まっている連中は、その夜の相手の定まった者を送り出すと、一斉に「処女撲滅運動万歳!」と凄まじい歓声を上げ、涼み客の出た森戸や逗子の海岸に押し出して行くのだ。乾き上った季節に、獲物は案外多かった。(石原慎太郎「太陽の季節」)

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源氏鶏太「青空娘」(昭和31年)

戦後の大ベストセラー作家・源氏鶏太の青春小説です。

薄幸の少女が幸せをつかむまでのシンデレラストーリーを描いています。

どんな雨の日でも、雲の向こう側には青空がある。

昭和32年、若尾文子の主演で映画化されました。

やっぱり、雲の彼方に、青空があったのだ。私は、間違っていなかった。そして、これからも、一生、雲の彼方の青空を信じる女となって、生きて行きたい。(源氏鶏太「青空娘」)

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井伏鱒二「駅前旅館」(昭和32年)

太宰治の師として有名な井伏鱒二の人気作品です。

駅前旅館を舞台に繰り広げられるドタバタ劇が楽しい。

人情味溢れるドラマは、井伏さんが得意とするところでした。

昭和33年、森繁久彌の主演で映画化されました。

玄関で女子高校生の口ずさんだ鼻歌は、万年さんの解説によりますと、英語で「あたしの胸に雨が降る…」という意味だそうでした。その次を何と言ったか万年さんも聴きとれなかったとのことですが、どうせ英語とはいっても棄てぜりふだ。ろくな文句ではなかったろうと存じます。(井伏鱒二「駅前旅館」)

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石坂洋次郎「陽のあたる坂道」(昭和32年)

石坂洋次郎のベストセラー小説です。

妾の子供として生まれた男の子が、欺瞞だらけの家族関係をぶち壊す。

昭和の青春文学には、複雑な家庭環境が定番だったようです。

昭和33年、石原裕次郎と北原三枝の主演で映画化されました。

ボーイが、黄色い液体と白い液体を満たしたそれぞれのコップを、二人の前にさし出した。雄吉はその一つをとって、たか子の方にさしのべて、「それでは、おたがいに友達になれたことを祝福して—」「よろしく—」二人はコップをカチリと触れ合せてから口に運んだ。(石坂洋次郎「陽のあたる坂道」)

源氏鶏太「青空娘」(昭和32年)

戦後の日本を明るく彩った人気小説家、源氏鶏太の長編小説です。

不倫の子という暗い出自を抱えながら、明るく生きる女性の物語。

前向きになることで、いずれ道は開けていくということでしょうか。

昭和32年、若尾文子の主演で映画化されました。

有子は立ち上った。新一も、立ち上った。憤りが、有子を、いちだんと美しい女にしていた。野望が、新一を、ますます、醜悪な男にしていた。しかし、有子は、壁際に、追い詰められていた。(源氏鶏太「青空娘」)

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井伏鱒二「珍品堂主人」(昭和34年)

阿佐ヶ谷の作家として知られる井伏鱒二の人気作品です。

骨董に夢を託した料亭主人の栄光と挫折の物語。

男って、やっぱり女で失敗するんですよね~。

昭和35年、森繁久彌と淡島千景の主演で映画化されました。

「何とか云ったらどうだ。てめえ、どうしても俺に煮えくり返るような思い、させたいんだ」珍品堂が殺気だって立ちあがると、「タンマ」と女子は、子供のように云って珍品堂の気を殺ぎました。(井伏鱒二「珍品堂主人」)

山本周五郎「青べか物語」(昭和35年)

時代小説作家・山本周五郎の遺した、数少ない現代物の長編小説です。

うらぶれた漁師町で「べか舟」を買わされた主人公は、やがて、この町に住みついてしまう。

千葉県浦安を舞台にした人情物語。

小料理屋の女の子にかもにされる話など、漁師町の風俗が生き生きと描かれている。

浦粕町は根戸川のもっとも下流にある漁師町で、貝と海苔と釣場とで知られていた。町はさして大きくはないが、貝の罐詰工場と、貝殻を焼いて石灰を作る工場と、冬から春にかけて無数にできる海苔干し場と、そして、魚釣りに来る客のための釣舟屋と、ごったくやといわれる小料理屋の多いのが、他の町とは違った性格をみせていた。(山本周五郎「青べか物語」)

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獅子文六「七時間半」(昭和35年)

ユーモア小説で人気の流行作家・獅子文六のドタバタ&ラブコメ小説です。

品川・大阪間を走る特急列車「ちどり」の食堂車が舞台になっています。

昭和30年代の食堂車って、妙に風情がありますよね。

それにしても、東京~大阪間で七時間半とは、、、

十時半になった。太陽も高くなって、食堂車の広いガラス窓から、カンカン射し込む。モップで拭いたばかりの通路も、見る間に乾いてしまう。そして、どのテーブルも、白布と銀器と花で整頓されたが、食器棚に近い三卓だけは、ひどく、世帯じみた風景だった。大きなおハチ、ミソ汁、つけもの、サンマの干物、納豆——とくると世間の朝飯と変らないが、ご飯だけは、スープ皿に山盛りの切り盛りである。(獅子文六「七時間半」)

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石坂洋次郎「あいつと私」(昭和36年)

石坂洋次郎の人気青春小説です。

複雑な家庭環境に育った<あいつ>と、堅実な家庭で育てられた<私>。

爽やかにセックスを語ったりと、明るい学園風景が描かれています。

昭和36年、石原裕次郎と芦川いづみの主演で映画化されました。

「僕は酒を飲んだり、かけ麻雀をしたり、ヌードショーを見たり、それから、たまに、夜の女を買ったりします」そう言った瞬間、彼のあさぐろい横顔には、意地のわるい微笑がチラと掠めさった。私の身体は化石したように硬ばり、心臓だけが、いまにも破けそうに大きく波うっていた。(石坂洋次郎「あいつと私」)

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三浦綾子「ひつじが丘」(昭和41年)

旭川市の小説家、三浦綾子の長編小説です。

教会で育った娘が、酒と女にだらしない男と結婚して振り回されてしまう物語。

女性って、どうして「ちょい悪」に惹かれてしまうんでしょう。

札幌や函館が、季節感豊かに描かれています。

「おろしてこいよ」そういって、無造作に渡した何枚かの千円札をちらっと見て、何かを訴えるように良一を見ていたサトミの目が、今目の前に見るように、あざやかに思い出された。「いやよ、生みたいのよ」(三浦綾子「ひつじが丘」)

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石川達三「青春の蹉跌」(昭和43年)

芥川賞選考委員を長く務めた石川達三のベストセラー小説です。

学生運動から離脱した法学部の大学生の、社会への抵抗と挫折を描いています。

激しいセックスと妊娠、堕胎と心中、、、すべてが青春の蹉跌だった!

昭和49年、萩原健一と桃井かおりの主演で映画化されました。

もはや後へは引けない。この行為を貫くより仕方がなかった。彼はからだを起し、女の頭のマフラを取って女の首に巻いた。二重に巻き、力一杯に締めてから、その端を首の後ろで結んだ。(石川達三「青春の蹉跌」)

山口瞳「居酒屋兆治」(昭和57年)

直木賞作家・山口瞳の人気長編小説です。

脱サラしてモツ焼き屋を始めた中年男性の物語。

訳あって結婚できなかった元カノとの関係は、、、

昭和58年、高倉健の主演で映画化されました。

さよが笑った。兆治は笑えなかった。「ここの店、初めてでしょう? こんなことやってるんです」「伝吉さん、あんたが悪いのよ」「……」「あんたが意気地なしだったから、いけなかったのよ」(山口瞳「居酒屋兆治」)

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小学館
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まとめ

最近では、名前を聞くことのない作家もいたりして、文学の世界の洵は短いなあと、つくづく感じます。

だけど、作品を読んでみると、これは忘れてほしくないなあというものも。

昭和はエンタメ系文学作品の宝庫なのかもしれませんね。

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じゅん
庄野潤三生誕100年を記念して、読書日記ブログを立ち上げました。庄野潤三さんの作品を中心に、読書の沼をゆるゆると楽しんでいます。