日本文学の世界

坂西志保「朝の訪問客」昭和の教育問題や女性問題を学ぶ

坂西志保「朝の訪問客」あらすじと感想と考察

坂西志保「朝の訪問客」読了。

本書「朝の訪問客」は、1972年(昭和47年)に刊行された随筆集である。

この年、著者は76歳だった。

子どもの学力低下と読書離れを考える

本書『朝の訪問客』は随筆集には違いないが、真面目な話が多い。

随筆というよりも社会批評という感じである。

殊に、女性問題とか教育問題に関する話題が多い。

ちょっと迷ったけれど、たまには、真面目な本を読むのも悪くないと思って最後まで読んだ。

読みながら驚いたのが、それぞれの話のテーマである。

子どもたちの学力が低下している、子どもたちが本を読まなくなった、学校を長期欠席する子どもたちが多くなった、などなど。

なんだか、最近の新聞報道でも読んでいるようで、びっくりするよりもあきれてしまう。

子どもの学力低下は、令和日本の大きな課題である。

いったい何を基準にして、子どもの学力を低下しているというのか知らないが、昨今の子どもたちの学力は低下しているから、学力向上が大きなテーマになっているらしい。

すると、子どもたちの学力は、1970年代初頭からずっと低下してきたのか、あるいは、一度向上していたものが近年になって再び低下してきたものなのか、よく分からない。

自分たちの世代が特別に学力が高かったというような話も聞かないので、あるいは、日本の子どもたちの学力は、ひたすら低下し続けているのかもしれない。

子どもたちが、本を読まなくなったという話もおかしい。

当時の子どもたちの読書離れは、テレビに大きな影響を受けていたらしいが、子どもが本を読まなくなったという話は、自分が子どもの頃から、ずっと続けられているような気がする。

戦争中は、当然に本を読む暇もなかっただろうから、本を読んでいた世代の日本人というのは、一体どこにいるのだろうか。

経済的に豊かになった今日、子どもに本を買って与えるのは親の負担にはならないかもしれないが、目録を見ていると新刊書が多い。時代に即し、子どもが心理的に共鳴するものとうたった編者もあったが、私はそれよりもむしろ、親は読書指導をするに当たって子どもの古典といってよいものから始めてほしいと思う。(坂西志保「朝の訪問客」)

ちなみに、僕は読書が好きなので、毎朝1時間、毎夜2時間、一日最低3時間の読書時間を確保するようにしている。

余裕があれば、もう1時間ぐらいは本を読むことができるし、週末には、一日10時間程度のまとまった読書時間を確保することができる。

それでも、本を読む時間が足りなくて、早く読書だけして生活できる身分になりたいと思っているが、これは、当分難しいだろう。

「読書離れ」なんて、贅沢な悩みだと思う。

不登校と少人数学級を考える

学校を長期欠席する子どもたちが増えている、という話題も、全然古くない。

1980年代には登校拒否と呼ばれて話題になり、現在は不登校と呼ばれるようになったが、学校へ通いたくない子どもたちは、いつの時代にも存在していたということらしい。

不登校の子どもたちが増え続けたら、やがて、学校へ通う子どもたちはいなくなってしまいそうなものだが、別に、そういうわけでもないらしい。

学校が楽しい場所だったら、自然体で誰もが登校するだろうから、行きたくない学校だったら無理して行く必要もないように思える。

少人数学級の話も書かれていた。

例えば、西欧の先進国では、小学校の学級は二十四名、中学校は十八名が理想とされ、個人的に考慮されている。日本では、小・中学校とも四十五名から五十名、五十五名というところさえある。教育の量産は不可能で、日本の新しくつくり出した豊かな社会こそ、このような点に大幅の改善を加え、個々の人間にとって意義ある教育を授けるよう心がけるべきだと思う。(坂西志保「朝の訪問客」)

日本の小学校では、最近になって三十五人学級が始まったばかりで、これも、少子化で教員が余り出したから、ようやく手を付けることができたというものらしい。

日本の国は、伝統的に、教育にはお金を使いたくないと考えている節がある。

これは、きっと間違っていないだろう。

古い本を読むと、現代が見えてくる。

僕が、好んで古い本を読む理由は、意外と、そんなところにもあるのかもしれないな。

ところで、この本、当時はどんな人たちが読んだのだろう。

「教育ママ」なんて呼ばれたお母さんたちも、こんな本を読んで勉強したのだろうか。

書名:朝の訪問客
著者:坂西志保
発行:1972/11/20
出版社:雷鳥出版

ABOUT ME
やまはな文庫
アンチトレンドな文学マニア。出版社編集部、進学塾講師(国語担当)などの経験あり。推しは、庄野潤三と小沼丹、村上春樹、サリンジャーなど。ゴシップ大好き。