いろいろの世界

小林真大「「感想文」から「文学批評」へ」実例付きの書き方入門書

小林真大「「感想文」から「文学批評」へ」実例付きの書き方入門書

小林真大『「感想文」から「文学批評」へ』読了。

本書には「高校・大学から始める批評入門」というサブタイトルが付いている。

本書は、このような「批評」のスキルを身につけてもらうことを目的として書かれました。二一世紀に生きる私たちは、毎日数えきれないほど多くの情報と接しており、批評力をみがく必要性が日に日に高まっています。とりわけ、日頃からインターネットを通じてさまざまなメディアにアクセスしたり、情報を発信したりしている高校生や大学生には、文学作品を批評することを通じて、この批評力を養うことが特に必要だと考えています。ぜひ本書を通して、いかなるコトバも批評できるテクニックを学んでください。(小林真大『「感想文」から「文学批評」へ』)

六つの文学批評タイプを紹介する「文学批評入門」

本書の構成は、序章である「文学批評には「型」がある?」に始まって、「1 作品を生み出す「作家」に注目してみよう」「2 「作品」は社会や作家から独立できるのか?」「3 すべての作品には共通するシステムがある?」「4 言葉には「声」がある」「5 読者がいなければ、作品は存在しない!?」「6 作品と読者を取り巻く環境を考える」と続いて、終章として「文学批評の存在意義はどこにある?」で終わっている。

序章の「文学批評には「型」がある?」では、批評のタイプには、次の六つのタイプがあることを紹介している。

1 作家論(作者重視)
2 ニュークリティシズム(メッセージ重視)
3 読者論(読者重視)
4 構造主義(コード重視)
5 イデオロギー批評(コンテクスト重視)
6 メディア・スタンディーズ(接触重視)

本書は、こうした六つの文学批評タイプをひとつずつ紹介する「文学批評入門」である。

書籍タイトルの『「感想文」から「文学批評」へ』は、文学批評の世界を学ぶことによって、単なる読書感想文から文学批評を意識するよう、若者たちへの期待を込めたものとなっている。

文学批評史を学ぶことで、あるいは、新しい世界が開けてくるのかもしれない。

批評の型を身につけると、自分で批評を書くことができる

文学批評は、模倣から始まる。

私たちはまず、批評の世界で確立されている一定の手法を学び、次にそれをまねる必要があります。たとえば、芥川龍之介の作品を批評したいと思った場合、まずは彼が書いた小説(たとえば『羅生門』)について、批評家Aの書いたテクストを読み、その批評スタイルを習得することができます。批評家Aのスタイルを学んだら、今度はその手法を用いることで、『羅生門』以外の別の芥川作品を批評できるかもしれません。このように、著名な批評家たちの文章に接することで、私たちはすぐれた批評スタイルをぬすみ、身体にたたき込むことができます。こうしたプロセスを通して批評の型をしっかりと身につけると、だんだんと自分で批評を書くことができるようになるのです。(小林真大『「感想文」から「文学批評」へ』)

もちろん、我々は、批評のルールも知らずに、文章を書くことはできない。

本書は「文学批評を始めるにあたってのルールブックのようなもの」だと考えてもいい。

それぞれの文学タイプがどのようなものなのか、実例を引用しながら解説しているから、ある程度直感的に「文学批評とは何か?」ということを身に付けることができる。

どの型(タイプ)の文学批評を用いて、実際の文学批評を書くのかということは、読者に委ねられている。

ここでは、とりあえず「文学批評にはたくさんの型(タイプ)があるんだな」ということを学ぶところから始められるとよいのではないだろうか。

書名:「感想文」から「文学批評」へ
著者:小林真大
発行:2021/2/26
出版社:小鳥遊書房

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やまはな文庫
元・進学塾講師(国語担当)。庄野潤三生誕100年を記念して、読書日記ブログを立ち上げました。いつか古本屋を開業する日のために、アンチトレンドな読書ライフを楽しんでいます。