いろいろの世界

「大学教授のように小説を読む方法」こじつけ的深読みのテクニック

トーマス・C・フォスター「大学教授のように小説を読む方法」読了。

きっかけは、笠間書院の「物語のカギと一緒に読みたい25冊」というチラシだった。

基本は「記憶」「シンボル」「パターン」の三つ

渡辺祐真/スケザネ著『物語のカギ』刊行記念選書と書かれている。

そして、25冊の中の1冊として紹介されているのが『大学教授のように小説を読む方法』という本だった。

もちろん未読である。

そして、読み終わった後で、なお、読まなきゃよかったと思った。

なぜなら、この本を読む時間を使って、別に有意義な本を一冊読むことができたからである。

『大学教授のように小説を読む方法』は、大学の文学部の教授が、どんなことを考えながら小説を読んでいるかということを教えてくれる。

記憶。シンボル。パターン。これが何にもましてプロの読者と一般大衆を分ける三つのアイテムだ。(トーマス・C・フォスター「大学教授のように小説を読む方法」)

簡単に言えば、この本は、物語をいかに深読みするか、ということのテクニックについて紹介している。

その最も基本的なテクニックは「記憶」「シンボル」「パターン」の三つである。

新しい小説を読むときは、いつも、あんな小説やこんな小説と似ているなと考えながら読む「記憶」。

これは暗喩なのか、アナロジーなのか、何を指し示しているのだろうかと考えながら読む「象徴」。

プロットやドラマ、登場人物の情動的レベルを超えて先を見る力である「パターン」。

つまり、「象徴性を見抜き、パターンを見つける力と最強の記憶力を併せ持った人物」こそが、文学作品を的確に読み解くことのできる力を持った者ということになるらしい。

あながち、嘘だとも思わないが、こんな読み方をしていたら、どんな小説だっておもしろくないだろうなとも思う。

読書とは「揚げ足を取る」ことではなくて「物語に共感する」ことだと思いたいからだ。

病気で寝込んでいる友だちの苦痛に共感できないで、医学的見地から客観的に病状分析してみせるだけの人間にはなりたくない。

そんな読書は、何も楽しくないに決まっている。

三つの基本以外にも覚えなければいけないことは、たくさんある。

文学作品には、「シエイクスピア」「聖書」「民話・お伽噺」からの引用が多いということも、そのひとつ。

では、平行関係や類似、プロット構成、引例にあたり、作家がこれなら誰でも知っているはずだと安心して使えるタネ本は何だろう? 児童書。そうだ。『不思議の国のアリス』。『宝島』。ナルニア物語。『たのしい川べ』や『キャット イン ザ ハット』。『おやすみなさいおつきさま』。シャインロックを知らない人でも、サムアイアムは知っている。(トーマス・C・フォスター「大学教授のように小説を読む方法」)

作家が利用できるおとぎ話が数あるなかで、きわだって動員力の高いものが(少なくとも二十世紀後半では)「ヘンゼルとグレーテル」だった。

たくさんの物語を知っているほど、新しい小説を読んだときの種明かしに有効なものらしい。

すべてはセックスの象徴である

小説を深読みするときには、季節や天候などに注意すべきである。

雨はただの雨ではなく、雪はただの雪ではない。

季節や天候に、どのような意味を持たせるかによって、物語の深読みはどんどん進んでゆく。

最高なのは「すべてはセックスの象徴である」こと。

ある日突然、われわれはセックスがセックスらしく見えなくてもいいことを知った。べつの物や動作だって、りっぱに性器や性行為の代役を果たすことができるのだと。(トーマス・C・フォスター「大学教授のように小説を読む方法」)

本書は、世の中の「こじつけ的な深読み」がどのように生まれてくるのかということを、丁寧に解説してくれている。

深読み的読書に関心のある方は、ページを開いてみる価値があるかもしれない。

この本を読んだ後では、本書の日本語版の発行年月日が「2010年1月10日」であるということにも、何か深い意味があるのではないかと深読みしてしまうことだろう。

書名:大学教授のように小説を読む方法
著者:トーマス・C・フォスター
訳者:矢倉尚子
発行:2010/1/10
出版社:白水社

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じゅん
庄野潤三生誕100年を記念して、読書日記ブログを立ち上げました。庄野潤三さんの作品を中心に、読書の沼をゆるゆると楽しんでいます。