アンディ・ウォーホル「アンディ・ウォーホルのヘビのおはなし」読了。
本作「アンディ・ウォーホルのヘビのおはなし」は、ウォーホル没後30年に刊行された絵本である。
1960年代初頭のファッション・アイコンたち
1963年(昭和38年)、皮革製品の会社<Fleming-Joffe社>が、<アメリカ・ファッション批評家賞>を受賞した。
Fleming-Joffe社は、ファッション・イラストレーターやグラフィック・デザイナーとして活動していた頃からの、<アンディ・ウォーホル>の初期クライアントだった。
ウォーホルは、メトロポリタン美術館での授賞式で発表する映画(スライド)のために一連のスケッチを描いたが、この映画は結局完成しなかったという。
ウォーホルの残したスケッチは、ピッツバーグのウォーホル美術館に寄贈され、やがて、一冊の絵本として出版された。
それが、本書『アンディ・ウォーホルのヘビのおはなし』である。
Fleming-Joffe社のために、ウォーホルは<ボアのノア>というヘビのキャラクターを選んで、この映画の中に登場させようとしていた。
ぼくはヘビだ。ヘビのようにするすると這いまわり、見た目もヘビそのもの。でも、ぼくの魂は創造性にあふれている。ぼくは画家であり、また役者でもある。(アンディ・ウォーホル「アンディ・ウォーホルのヘビのおはなし」野中邦子・訳)
ウォーホルの扮したヘビは、「上流社会に仲間入りしたい」という、強い願いを持っていて、次々とセレブたちに受け入れられていく。
つい最近は、おしゃれな女の人たちに追いかけまわされた。ほんとうにひっぱりだこだったんだ。シックな装いに欠かせなかったからね。(アンディ・ウォーホル「アンディ・ウォーホルのヘビのおはなし」野中邦子・訳)
イラストレーターとしてのキャリアをスタートさせたばかりの頃から、ウォーホルは完全なる<セレブ中毒>だったらしい。
本書に登場するセレブは、1960年代初頭におけるファッション・アイコンとなった女性たちばかりだ。
ぼくはジャクリーン・ケネディのブーツになった。ハッピー・ロックフェラーの鞄になった。ダイアナ・ヴリーランドのすてきな靴にもなった。リズ・テイラーの手首に巻きついてブレスレットになった。ココ・シャネルのシャツにも。(アンディ・ウォーホル「アンディ・ウォーホルのヘビのおはなし」野中邦子・訳)
<ジャクリーン・ケネディ>は、ケネディ大統領夫人で、<ダイアナ・ヴリーランド>は、ファッション雑誌『ヴォーグ』の編集長。
<リズ・テイラー>は、映画『クレオパトラ』(1963)で主役を演じた女優の<エリザベス・テイラー>だ。
ココ・シャネルまで登場して、これが一冊の絵本になっているんだから、どれだけ贅沢なんだっていう感じがするのも当然だろう。

絵本なんて言ってるけど、これはウォーホルの画集だ
ところで、アンディ・ウォーホルが、<キャンベル・スープ>の缶をモチーフにしたポップアートを完成させたのは、1961年(昭和36年)のこと。
1962年(昭和37年)には、<マリリン・モンロー>をモチーフした作品を発表しており、ポップアートの代表作は、この時代に続々と誕生していたわけだ。
このスケッチを描いた当時、ウォーホルが既に「ミスター・ポップアート」だったというのは、ちょっと意外な事実である。
どおりで、スケッチと言っても、そのまま飾っておきたいと思えるような作品ばかりのはずだ。
絵本なんて言ってるけど、これはウォーホルの画集である。
書名:アンディ・ウォーホルのヘビのおはなし
著者:アンディ・ウォーホル
訳者:野中邦子
発行:2017/6/30
出版社:河出書房新社