2018年10月に出版された雑誌「Pen」の特集は「やっぱり、アメトラでいこう。」でした。
ブルックスブラザーズから始まった定番スタイル「アメトラ」。
ずっとアメトラが好きだった人も、これからアメトラが好きになるだろう人も、読んでおいて損はなし、です。
書名:Pen No.461
著者:
発行年:2018/10/15
出版社:CCCメディアハウス
作品紹介
雑誌「Pen」のアメトラ特集「やっぱり、アメトラでいこう。」。
ファッション誌ではない「Pen」が、こういうコテコテのファッション特集をやるのって、何だか新鮮な感じがしました。
だけど、ファッション誌ではないからこその新しい切り口が期待できることは確か。
そして「pen」のアメトラ特集は、確かに古くからのアメトラファンの期待をも裏切らない充実の内容となっています。
特集名は「やっぱり、アメトラでいこう。」とアメトラ推しになっていますが、実際のテーマはほぼ完全に「ブルクスブラザーズ」。
実は、この年2018年は、アメリカの老舗アパレルブランド「ブルックスブラザーズ」が誕生して200年のアニバーサリーイヤーだったんですね。
本号では、ブルックスブラザーズの歴史やものづくりの現場を徹底取材するとともに、伝統を継承するニューヨークの男たちの哲学から愛好家たちの着こなし、注目すべき最新アイテムやニュースまでを完全網羅しています。
ブルックスブラザーズとアメトラを理解するための、最高の教科書だと言えそうですね。
(2023/05/31 01:41:53時点 Amazon調べ-詳細)
なれそめ
僕がこの「Pen」を購入したのは、もちろん「ブルックスブラザーズ」が大好きだからです。
そして、僕が「ブルックスブラザーズ」を好きになった理由は、やはり「歴史ある名門ブランド」だからという理由が大きかったような気がします。
だって200年に渡っていろいろな人が良いって言ってるんだから悪いはずはない。
最初は、そんな理由でブルックスブラザーズのショップを訪れ、少しずつ買い物をしながら少しずつブランドコンセプトを理解して、そうやって少しずつブルックスブラザーズは僕の生活の中に溶け込んでいきました。
今ではブルックスブラザーズは、僕の暮らしの中になくてはならない存在となっています。
みんなが良いというものは、やっぱり良いんだなと思いました(笑)
本の壺
ブルックスブラザーズを知る
1818年に創業した時、ブルックスブラザーズ唯一の原則は「最高品質の商品だけを作り取り扱うこと」でした。
1849年、アメリカで初めてとなる「既製品のスーツ(レディメイド)」を発売、これによってスーツが一般庶民にも手の届くものになったと言われています。
社名を「ブルックスブラザーズ」として定めたのは1850年で、このとき、現在も続いている羊のブランドロゴを商標登録。
1865年、アメリカ大統領エイブラハム・リンカーンは、2期目の就任式でブルックスブラザーズのフロックコートを着用して出席、その5週間後には、同じコートを着た状態で暗殺されました。
ニューヨークのマディソン旗艦店には、ブルックスブラザーズがリンカーンのために特注した姿見があります。身長190cm近いリンカーンのために、特大の鏡を特注したんだとか。通称「リンカーン・ミラー」。
1900年、アメリカで初めてハリスツイードを使った洋服を発売、ラクーンファー付きのダブルコートはベストセラーとなります。
1910年、当時のブルックスブラザーズはレディース商品を展開していませんでしたが、上流階級の私立学校に通う女子大生は、ボーイズのポロコートを愛用しました。
1896年、世界で初めてのボタンダウンシャツを考案、「ボタンダウン・ポロカラーシャツ」は、シャツ本体にカラーを付けた状態で販売された最初の商品でした。
ブルックスブラザーズの「オリジナル・ボタンダウン・オックスフォードシャツ」は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の「過去2世紀で最も影響を与えた111点」に選ばれています。
1904年、アメリカに初めて「シェットランドセーター」を紹介。
1918年、アメリカのビジネススタイルの象徴となる「No.1サックスーツ」の販売開始。
1920年、アメリカ式のレジメンタルタイである「レップタイ」を普及、イギリスでは左下がりだった斜め縞模様の向きを逆にして、右下がりで発売しました。
1945年、第二次世界大戦の終戦を告げるヤルタ会談で、フランクリン・ルーズベルト大統領が着用していたマントはブルックスブラザーズ社製でした。
1950年代には、アメリカで初めてとなる「アーガイル柄のソックス」を販売、スコットランドの工場に依頼したものでした。
「灰色の服を着た男」(1953年)で、主演のウレゴリー・ベックが着用しているボタンダウンシャツはブルックスブラザーズ製。
グレゴリー・ベックは、「アラバマ物語」(1962年)でも主人公の弁護士を演じるブルックス・ブラザーズのスーツを着て登場しています。
「卒業」(1967年)の衣装協力はブルックスブラザーズで、主役ダスティン・ホフマンの着こなしは、まさにアメトラのお手本でした。
「マイレージ、マイライフ」(2009年)でジョージ・クルーニーがオーダーするスーツはブルックスブラザーズ社製で、ブルックス店内でロケをした場面も登場しています。
「アルゴ」(2012年)のベン・アフレックが着用しているスーツやボタンダウンシャツ、レップタイなどはすべてブルックスブラザーズが用意したもの。
「華麗なるギャツビー」(2013年)の衣装担当もブルックスブラザーズで、衣装担当のキャサリン・マーティンは、アカデミー衣装デザイン賞を獲得しています。
そして、ブルックスブラザーズは、今でもアメリカ海軍の制服を製造するなど、老舗ブランドとしての歴史を刻み続けています。
ブルックスブラザーズの愛用者を知る
「華麗なるギャツビー」の著者であるスコット・F・フィッツジェラルドは、ブルックスブラザーズの顧客で、「ソフト襟のボタンダウンシャツ」は、フィッツジェラルドが着用したことで広まったと言われています。
ジャクリーンと結婚したジョン・F・ケネディ上院議員に贈られたのは、ブルックスブラザーズの傘。ケネディは「No.2スーツ」の2ボタンスーツの愛用者でした。
ジョン・F・ケネディが着用したブルックスブラザーズの「ボクサーショーツ」は、ゲティスバーグ歴史博物館に所蔵されています。
マリリン・モンローと結婚したとき、アーサー・ミラーはブルックス・ブラザーズのシャツを着ていました。
バディ・ホリーが初めてニューヨークに来た時、最初に訪れたのがブルックスブラザーズでした。エヴァリー・ブラザーズに憧れていたんだとか。
ジャズミュージシャンのマイルス・デイビスもブルックスブラザーズのボタンダウンシャツを愛用。
俳優のスティーブ・マックィーンも、ブルックスブラザーズの重要な顧客の一人でした。
アンディ・ウォーホルは、最初の広告制作収入でブルックスブラザーズのボタンダウンシャツ100枚を購入しました(ウォーホルは「BB#1ストライプタイ」も愛用)。
フレッド・アステアは、50本のフーラードタイをまとめて購入しています。
1980年代~1990年代にかえてアメトラのシンボル的存在だったウディ・アレンは、もちろんブルックスブラザーズの信奉者でした。
2005年8月号の「Vogue」でマドンナは、ブルックスブラザーズのメンズパジャマで登場。
何気なく観ている映画や雑誌の中にも、ブルックスブラザーズは登場していそうですね。
村上春樹のエッセイを読む
雑誌「pen」のアメトラ特集「やっぱり、アメトラでいこう。」で僕が一番楽しみにしていたのは、実は村上春樹さんのエッセイです。
ブルックスブラザーズ200周年特別エッセイで、タイトルは「ヘリンボーンのスーツ」。
1985年に「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」という小説で谷崎賞をもらったときには、青山通りのブルックス・ブラザーズで(この頃にはようやく日本にも店舗ができていた)、ネイヴィーブルーのダブル・ブレストのブレザーコートを買って、それを着ていった。グレーのフラノのパンツに、黒のウィングチップ・シューズ。どんなネクタイを締めていたかは覚えていない。たぶんレジメンタル・ストライプだったと思うのだが。(村上春樹「ヘリンボーンのスーツ」より(Pen 2018/10/15))
村上春樹さんはいろいろなエッセイの中でブルックスブラザーズのことを書いています。
僕が最初にブルックスブラザーズのことを覚えたのも、たぶん村上さんのエッセイから。
だから、この特別エッセイはすっごく楽しみにして「Pen」を買いました。
正直に言って、この村上春樹さんのエッセイのためだけに「Pen」を買ったと言っても良いくらいに。
初めてアメリカに行ったのは小説家になってからのことだ。1983年だっけ? 最初に訪れた街でまず足を運んだのはブルックスブラザーズの店だった。アメリカに行ったらまずブルックスに行かなくちゃと、ずっと思っていたから。真夏だったので、そこでブルーの半袖のストライプのシャツを買った。僕にそのシャツを売ってくれた店員は、背の高い年配の白人男性だった。姿勢がよく、ニューイングランド風の上品な英語を喋り、もちろんぱりっとしたスーツに身を包み、「店員」というよりはどこかの由緒ある会社の重役みたいに見えた。(村上春樹「ヘリンボーンのスーツ」より(Pen 2018/10/15))
このときのエピソードは、エッセイ集「やがて哀しき外国語」収録の「ブルックスブラザーズからパワーブックまで」にも登場します。店員のお爺さんは「ハーヴァード大学の教授」みたいに見えたそうです。
最初にアメリカに行ったときに、ボストンのブルックス・ブラザーズに入ってシャツを選んでいたら、ばりっとしたブルックス・スーツに身を包んだ上品なおじいさんの店員が僕の相手をしてくれたのだが、ここ人の英語がいかにもニュー・イングランド風の立派なもので、洋服屋の店員というよりはまるでハーヴァード大学の教授みたいに見えた。(村上春樹「やがて哀しき外国語」より)
読書感想
こうして久しぶりに読み返してみて、「Pen」のアメトラ特集はやっぱり凄いと思いました。
これはもう完全に永久保存版にするだけの価値があります。
できればMOOK本か何かで出して、もっと気軽に買えるようにして欲しかった。
それだけの価値がある充実度です、絶対に。
もう1年半も昔の雑誌で、なかなか入手しにくいかもしれませんが、アメトラに興味のあるすべての方に読んでいただきたい特集です。
保存版として、もう1冊買っておけば良かった!(笑)
まとめ
雑誌「pen」のアメトラ特集「やっぱり、アメトラでいこう。」は永久保存版の価値あり。
アメトラの入門書として、アメトラの教科書として。
オシャレに関心のある、すべての大人男子にお勧め。
(2023/05/31 01:41:53時点 Amazon調べ-詳細)