小学生の頃、学校の図書館で本を借りるのが大好きでした。
児童書ミステリー「マガーク少年探偵団」シリーズも、そのひとつ。
今回は、1970年代から1980年代にかけて、日本中の小学生に大人気だった「マガーク少年探偵団」シリーズについて、ご紹介しましょう。
マガーク少年探偵団について
「マガーク少年探偵団」は、イギリスの作家エドマンド・ウォレス・ヒルディックが書いた児童文学作品のシリーズ名です。
最初の作品『こちらマガーク探偵団』は、本国イギリスでは1973年(昭和48年)に発表され、日本では藤沢忠枝さんの翻訳によって1977年(昭和52年)にあかね書房から出版されました。
ヒルディックの「マガーク少年探偵団」は、当時、イギリスやアメリカで既にベストセラー作品となっており、フランスやドイツなど十か国で翻訳出版されるほどの人気作品だったそうです。
次々に新しい作品が発表される「マガーク少年探偵団」シリーズは、日本中の小学生から支持される人気作品となり、1995年までに全18作品が刊行されています(日本未発表作品が、この他に6作品ある)。
1 こちらマガーク探偵団(1977年)
2 あやうしマガーク探偵団(1978年)
3 あのネコは犯人か?(1978年)
4 消えた新聞少年(1978年)
5 スーパースターをすくえ(1979年)
6 見えない犬のなぞ(1979年)
7 あやしい手紙(1979年)
8 まぼろしのカエル(1980年)
9 木の上のたからもの(1980年)
10 雪の中のスパイ(1981年)
11 銀行強盗をつかまえろ(1982年)
12 マガーク対魔女(1983年)
13 ぬすまれた宝石のなぞ(1984年)
14 悪魔 VS マガーク + 数学の天才(1985年)
15 ゆうかい犯 VS 空手少女(1986年)
16 ミイラのつぶやき(1987年)
17 オウムどろぼう事件(1990年)
18 作戦名はマガークザウルス(1995年)
1977年から1995年まで、20年近くも続いた児童文学って、なんだかすごいですよね。
エドマンド・ウォレス・ヒルディックって誰?
「マガーク少年探偵団」シリーズの作者、エドマンド・ウォレス・ヒルディック(1925-2001)は、イギリスの児童文学作家です。
もともと、学校の教師から児童文学作家へと転身したヒルディックは、32歳のときにトム・ギャロン賞を受賞。
さらに、「ルイのクジ引き」という作品でテンデルセン賞を受賞するなど、本国イギリスでも大いに活躍しました。
ヒルディックの児童文学は各国で翻訳されて、世界中の子どもたちに愛されています。
藤沢忠枝って誰?
続いて、「マガーク少年探偵団」を日本に紹介した翻訳家、藤沢忠枝さんについて。
藤沢忠枝(1912-2001)は、日本で有名な翻訳家で、特に児童文学の世界で多くの作品を残しています。
例えば、ポプラ文庫の『ふしぎの国のアリス 』(ルイス・キャロル、1982)や『若草物語』(オルコット、1987)、『小公子』(バーネット、1987)などは、いずれも藤沢忠枝さんの翻訳によるもの。
また、ミステリー文学の分野でも有名で、新潮文庫の『オリエント急行の殺人』(1960年)をはじめとするアガサ・クリスティの作品を数多く翻訳しています。
マガーク少年探偵団の登場人物
「マガーク少年探偵団」の「マガーク」というのは、この物語の主人公の名前です。
ジャック・マガークは年齢10歳、考えるよりも先に行動してしまうガキ大将タイプの少年で、ひょんなことから探偵団の設置を思いつきます。
このマガークを冷静にコントロールする役割の少年が、マガークの親友であり、この物語の語り手であるジョーイ・ロカウェイ(10歳)です。
探偵活動の記録係であるロカウェイは、シャーロック・ホームズの活躍ぶりを記録するワトソン博士のように事件を綴っていきますが、ホームズほどにマガークのことを信用しているわけではありません(むしろ不安に感じている)。
探偵団設置のきっかけを作ったのが、二人の新しい友だちウィリー・サンドフスキー(9歳)です。
なにしろ、ロカウェイの隣に引越してきたばかりのウィリーのキャッチャー・ミットがなくなってしまい、このキャッチャー・ミットを捜索することが探偵団最初のミッションとなるのですから。
ウィリーの特技は、鼻がすごくよいことで、まるで警察犬のように彼の鼻は活躍します。
そして、最後に紅一点のワンダ・グリーグ(9歳)。
<キャッチャー・ミット行方不明事件>の一容疑者だったワンダは、持ち前の行動力で探偵団に入団してしまいます。
木登りが得意で、男の子にも負けないくらいに気が強い女の子です。
こうして四人の個性的な子どもたちが集まって誕生した「マガーク少年探偵団」は、難解なミステリーを次々と解決していくことになります、、、
マガーク少年探偵団の魅力
久しぶりに『こちらマガーク探偵団』を読んで、気が付いたことがいくつかあります。
まず、探偵団の子どもたちが、とても生き生きと描かれていること。
四人の子どもたちは、いずれも自由で活発に探偵活動を楽しんでいます。
だいたい、ウィリーとは初対面だったマガーク(とロカウェイ)が、いきなり探偵団を結成してしまうという展開は、仲良くなるのに時間なんて関係なかった、あの少年時代を思い出させてくれました。
子どもたちの探偵活動に、周囲の大人たちも寛容に理解を示してみせます。
彼らの自主性や人格をきちんと認めているからこそ、大人たちも子どもたちの行動を受け入れているのでしょう。
そして、マガークたち探偵団のメンバーも、子どもだからといって大人たちに甘えることなく、それぞれの能力を最大限に発揮して事件解決に向けて進んでいきます。
ミステリーだけど悪者は出てこない、というのも、読んでいて気持ちのよかったところ。
子どもたちの清々しい生き様こそが、マガーク少年探偵団の魅力だったのではないでしょうか。
複雑な家庭環境も、コミュ障の子どもたちも登場しない、ただ無邪気に明るくて仲良しだった探偵団の物語。
あるいは、それは、現代のファンタジーかもしれません。
だけど、理想的な子どもたちの世界が「マガーク少年探偵団」シリーズにはあったと、今も僕は感じています。
生きることが難しい時代だからこそ、こんな物語を現代の子どもたちに伝えていきたいですね。
まとめ
ということで、以上、今回は、1970年代から1980年代にかけて、日本中の子どもたちに大人気だった児童文学ミステリー「マガーク少年探偵団」シリーズについてご紹介しました。
初代「マガーク少年探偵団」シリーズは残念ながら廃刊となってしまいましたが、現在は新装版が復刊されています(ただし、一部の人気作品のみ)。
ちなみに、新装版には「マガーク少年探偵団!」とエクスクラメーション・マークが加えられています。
子どもだけではなく、大人の方にもお勧めの児童ミステリーですよ。