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山本容子のジャズ絵本「Jazzing」付録のCDを聴きながら楽しむ絵とエッセイのスタンダードナンバー

山本容子のジャズ絵本「Jazzing」付録のCDを聴きながら楽しむ絵とエッセイのスタンダードナンバー

山本容子のジャズ絵本「Jazzing」読了。

本作「Jazzing」は、銅版画家の山本容子によるジャズ絵本である。

全24曲のスタンダードなジャズナンバーを絵と文章で紹介

「ジャズ絵本」と言っても、ストーリーがあるわけではない。

一つの曲に、一枚のイラストと短い文章がセットになっている。

美しいイラストがセットになったエッセイ集というところか。

僕は、文章を読むためにこの本を買ったけれど、絵が好きな人にとっては、その逆もありだろう。

全部で24曲のスタンダードなジャズナンバーが、それぞれ絵と文章で紹介されている。

例えば、コール・ポーターの名曲「You’d Be Nice to Come Home To」。

この曲と聴くと、著者は、『パパは何でも知っている』『うちのママは世界一』といった、1950年代のアメリカのホームドラマを想い出すという。

ママのスタイルは、特別気になって憧れの気分で見ていた。ヘアにはウェーブの美しいパーマがかかっていて、口紅も光っていて、タイトスカートにやさしいブラウス。家の中なのに、こんな姿で大きなカウチに座っているのが信じられなかった。(山本容子のジャズ絵本「Jazzing」)

昭和30年代、日本とアメリカの暮らしの違いは、現在では信じられないくらいにかけ離れていたのだ。

ちなみに、「You’d Be Nice to Come Home To」の作曲は1943年(昭和18年)。「待っている人のところへ、自分が戻れたらいい」という意味だが、邦題は「帰ってくれたらうれしいわ」だった。

「白い歯の笑顔がすべてを代表するアメリカ的なホームをウソくさく思っていた頃もあった」と言うが、現在は「このホームに憧れる」と、著者は綴っている。

なぜなら、「キチンと暮らすには、愛をもって生活全体にアイロンをかけるような手間が必要だということを知ったから」。

「愛をもって生活全体にアイロンをかけるような手間が必要だ」という言葉に、人生の深みがある。

この本は、単なるジャズナンバー紹介だけのエッセイ集ではないのだ。

同じようなことは「セプテンバーソング」にも言える。

「9月が人の世の秋なら、9月から11月という残りの日々は貴重になる。この貴重な日々を君と過ごそう」うーん、私の年齢だと人生の9月にいるのか。そうだとしたら、木々の色の変化に焦りを感じないで、楽しむことにしよう。(略)枯葉にだって、立派な美しさがあるのですから。(山本容子のジャズ絵本「Jazzing」)

ちなみに、本書が刊行された2006年(平成18年)、山本容子さんは54歳だった。

秋を楽しむことのできる、ゆったりとした大人の余裕が感じられていい。

ちなみに、「セプテンバーソング」は、映画『旅愁』で使われて以降、スタンダードナンバーとなった曲。中年男女の悲恋物語にぴったりですね。

24曲のジャズナンバー全曲を、CDで聴くことができる

本書は、山本容子さんのイラストとエッセイの本だが、付録としてCDが付いている。

つまり、本書で採りあげられている24曲のジャズナンバー全曲を、CDで聴くことができるのだ。

音楽の好きな人にとって、こういうふうに、本とCDがセットになった企画というのは、本当にうれしいものである。

CDにおさめられた24曲は作曲家の谷川賢作さんプロデュースによる。この本のためだけのオリジナル版。どうか、音楽に身をまかせて、懐かしい曲と共に過した皆さんの人生を想い出しながら、絵と親しい関係を作っていただけると嬉しい。(山本容子のジャズ絵本「Jazzing」)

谷川賢作は、詩人・谷川俊太郎の息子で、レコーディングには、さがゆき、伊藤ノリコ、鈴木康恵、黒田京子、高瀬”makoring”麻里子、吉野弘志、牧島克彦、ドラムスコ本間、渋谷直明など、非常にたくさんのミュージシャンが参加している。

音楽を聴きながら、絵を見て、文章を読み、そして、幸せな気持ちになることができる。

一冊の本(とCD)で、こんなに豊かな気持ちになることができるなんて、何という贅沢だろうか。

書名:山本容子のジャズ絵本「Jazzing」
著者:山本容子
発行:2006/10/3
出版社:講談社

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講談社
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じゅん
庄野潤三生誕100年を記念して、読書日記ブログを立ち上げました。庄野潤三さんの作品を中心に、読書の沼をゆるゆると楽しんでいます。