本当に大事なことは、いつもの毎日を大切に生きることだ。
自分らしい生き方を手に入れるためのヒントがここにある。
松浦弥太郎流ライフスタイルの決定版。
書名:いつもの毎日。衣食住と仕事
著者:松浦弥太郎
発行:2013/2/25
出版社:集英社文庫
作品紹介
「いつもの毎日。衣食住と仕事」は、松浦弥太郎さんのエッセイ集です。
弥太郎流ライフスタイルの解説書とも言うべき内容で、どのように暮らしていくべきかということのヒントが満載されています。
巻末には、女優であり、『マニッシュ』編集長でもある菊池亜希子さんとの対談も収録されています。
(目次)1章「衣」のことー自分らしくいるためのワードローブ/トラディショナルから学ぶこと/シャツ/ジャケット/ジーンズとパンツ/腕時計/靴/コート/雨の日の装い/パジャマ/鞄/セーター/眼鏡/ハンカチ/帽子やマフラー、手袋/値段とファストファッション///第2章「食」と「住」のことー毎日の生活を豊かにする工夫/家族のこと/個室のすすめ/リビングのルール/テーブルと椅子/マグカップと食器/お茶碗とお箸/お弁当箱とお鍋とやかん/朝ごはん/スリッパ/一生つきあえる店を持つ/アロマオイル/オーガニック/花と花瓶/ベッドと枕とリネン///第3章「仕事」のことー働くうえで考えるルールと作法/つねに先手を打つ/デスクまわり/ごみの行方/手帳とスケジュール/文房具/手紙のルール/打ち合わせとモチベーション/おみやげ/「つもり」をやめる/名刺/財布/スーツケース///おわりに/特別対談 菊池亜希子×松浦弥太郎/お店紹介
単行本は、2010年7月に、KKベストセラーズより刊行されています。
なれそめ
行きつけの雑貨店の女性店主が、あるとき「じゅんさん(管理人)って松浦弥太郎さんみたいですよね」と言いました。
そのとき、僕は松浦弥太郎さんのことを全然知らなかったのですが、ライフスタイルにこだわる僕の生き方が、松浦弥太郎さんにそっくりだということでした。
弥太郎さんとビジネス上のお付き合いもある彼女の話によると、僕の雰囲気までが、どうやら弥太郎さんという人に似ているらしいのです。
あるとき、僕は古本屋さんで弥太郎さんの著書を見つけて買ってきました。
それが本書『いつもの毎日。衣食住と仕事』です。
最初からブルックスブラザーズやマーガレットハウエルの話で始まっていて、確かに嗜好や考え方が、自分に似ているような気がしないでもありません。
そして、それからは、自分の生き方とかライフスタイルとかについて、細かいことを口にするのはやめておこうと思いました。
自分が弥太郎さんのコピーのように思われてしまうこと必至だと悟ったから(笑)
あらすじ
「ベーシック探しは、いつも新しい自分であるためのスタートラインを見つけること。いつもの毎日を送るための一歩です。」(「はじめに」より)
どうすれば心地よく、日々の仕事や暮らしができるのか?
『暮しの手帖』編集長が自らに問いかけ続けて見つけた、自分らしいベーシックのかたち。
毎日を豊かにするヒントがたくさん詰まったエッセイ集です。
モデル・女優の菊池亜希子さんとの対談を特別収録。
(背表紙の紹介文より)
本の壺
心に残ったせりふ、気になったシーン、好きな登場人物など、本の「壺」だと感じた部分を、3つだけご紹介します。
若い頃からずっと着ているのは、ブルックスブラザーズのシャツ
若い頃からずっと着ているのは、ブルックスブラザーズのシャツ。マーガレット・ハウエルのコットンシャツを買うこともありますが、いずれも白を選んでいます。(「シャツ」より)
この本を読んだとき、僕は既にブルックスブラザーズの顧客で、しかも、マーガレット・ハウエルの顧客でもあったので、世の中には似たような人がいるんだなと思いました。
いわゆる「ベーシックなもの」や「スタンダードなもの」が好きという人は、大抵の場合、ブルックスブラザーズやマーガレット・ハウエルといった定番ブランドに落ち着くということかもしれませんね。
特段オシャレに関心がなくても、ブルックスブラザーズやマーガレット・ハウエルのシャツを着ているだけで、こぎれいに装うことができるし、小ざっぱりとして見えるので、普通の大人の方にはお勧め。
シャツの色は「白」を選ぶのも基本ですね。
白いシャツに関しては、別記事「河毛俊作『一枚の白いシャツ―男、45歳からの服装術』ダンディズムとは?」でも詳しく紹介しているので、併せてご覧ください。

財布は二年ごとに買い替えます
財布がぼろぼろだと、なんだかもう、駄目な気がします。使い込んで年季が入ったものより、つねに新しくてぱりっとしているもの。お金を入れるものですから大切に使いますが、二年ごとに処分し、新しい財布に買い替えます。(「財布」より)
弥太郎さんの、このエッセイを読んでから、僕も財布を2年ごとに更新することにしました。
「安い財布を使うのはお金に対して失礼なので、それ相応の品を買います」とあるので、僕もそれ相応の品を買うようにしています。
財布は、仕事仲間やお店の人の目にも留まりやすいアイテムなので、おかしなものを使っていると、人間性までおかしく見られそうな気がするし(笑)
基本的に、信頼できるブランドの定番商品が安心。
現在はフェリージの通称「コロコロ」を使っていますが、人前でも自信を持って出すことができる財布だと思います。
ダッフルコートとウールのコートと、レインコート
僕が持っているのは、ダッフルコートとウールのコートと、レインコート。この三着で、コートはもう十分だと思っています。(「コート」より)
村上春樹さんの大好きなダッフルコートが、ここでも登場しています。
ベーシックなスタイルを好む大人の人たちは、どうやらダッフルコートが大好きみたいですね。
弥太郎さんのコーディネートの基本は、「今日、何を着ていこうか」と、毎朝考えたり悩んだりする負担を背負わないものであること。
いわゆる「私服の制服化」に通じる、ミニマルなファッション観が徹底されています。
コーディネートのベースが定まっていると、余計な買い物をする必要がないし、組み合わせに失敗するような買い物をしてしまうこともありません。
大人のファッション術は、やはり「シンプル」と「ベーシック」が鍵になるようです。
なお、村上春樹さんのダッフルコートについては、別記事「村上春樹・安西水丸「村上朝日堂」初期エッセイ集で読む村上ワールド」で紹介しているので、併せてご覧ください。

読書感想こらむ
松浦弥太郎さんはライフスタイルにこだわりながら生きている人です。
弥太郎さんのライフスタイルはシンプルかつベーシックでありながら、弥太郎流とも言うべき人生哲学の美学が根底に流れています。
格好悪い生き方はしたくない。
それが、弥太郎流ライフスタイルの基本なのではないでしょうか。
格好悪い生き方をしたくないからスマートに生きる。
スマートに生きるために、シンプルやベーシックに徹する。
そんな流れが、弥太郎さんのライフスタイルにはあるような気がしています。
ベーシックなライフスタイルを貫くことは、流行に右往左往しながら生きるよりも、ずっと複雑で難しいことかもしれないなと、本書を読んで思いました。
僕ももちろん「ベーシックにこだわりながら生きていきたい」と考えていますが、人生ってそんな簡単にはいかないんですよね、実際のところ。
ミニマルな生き方に憧れている人は、まずこの本を読むことから始めてみてください。
まとめ
大人ベーシックなライフスタイルを実践する作家、松浦弥太郎。
毎日を心地良く生きるための提案が詰まったエッセイ集。
シンプルライフは松浦弥太郎さんのモノマネから始めよう。
著者紹介
松浦弥太郎(作家)
1965年(昭和40年)、東京生まれ。
41歳のとき、『暮しの手帖』編集長に就任。
『いつもの毎日。 衣食住と仕事』刊行時は48歳だった。