佐藤浩一「この1冊で本当の男の色気がわかる!」鈴木京香「人生の様々な場面で美しく装う強い男―。女はそんな主人公に寄り添いたいと思うのです」“粋”を知り尽くした敏腕TVディレクター初のエッセイ集。(単行本の帯より)
書名:一枚の白いシャツ―男、45歳からの服装術
著者:河毛俊作
発行:2011/3/25
出版社:新潮社
作品紹介
「一枚の白いシャツ―男、45歳からの服装術」は、メンズファッションをテーマにしたエッセイ集ですが、作者はアパレル関係者にあらず、敏腕TVディレクターの河毛俊作さん。
いわば、業界人によるファッション観を綴った本ということになりますが、著者の服好きは相当のものらしく、ページの隅から隅までファッション愛が行き渡っています。
サブタイトルに「男、45歳からの服装術」とあるように、ダンディズムを求めるすべての大人の男性に捧げる名著です。
(目次)「第1章 ワードローブの組み立て方」反合理主義的服装術―一番の基本は白いシャツ/背広と色気―中年過ぎた男の背広について/灰色と黒と白―コートについて考える/愛と哀しみのネイビーブレザー/晴れた朝、永遠が見える~ポロシャツとブレックファースト~/真夜中のカーディガン/時の過ぎゆくままに~大人の腕時計について~/最後の楽園~夏休みにどんな服を着ようか~/感傷的な鞄選び/ジャズとツィード/女王陛下のダッフルコート/ジャスト・ア・ジゴロ~礼服について考える~/1942年夏のサドルシューズ~男と靴~/ブルージーンズよ永遠なれ/ダウンジャケットの悪夢~最強の防寒着~/革ジャン太平記/絶対定番/四十五歳を過ぎてからのワードローブの組み立て方 「第2章 端正な男であるために」ゴッド・ブレス・アメリカ~反逆のレジメンタルストライプ~/フレンチ・フィルム・ノワールの男たち~地下室のメロディー~/グルーミングについて~床屋とウィスキー・ソーダ~/雨の日のジントニック~春のレインコート~/ポケットの中の迷宮~男の宝物について~/Dディの為の買い物/神、憐憫、慈悲の敵~男の色気について/マッド・メン~マジソン街の亡霊たち~/良い趣味・悪い趣味/甘み・辛み、そして苦み/道場としてのメンズショップ/子供の服・大人の服/英国紳士の作り方/老人と服/毒とダンディズム/カクテル/洋服と日本人/「特別対談 河毛俊作×佐藤浩一(俳優)”男の色気”は無駄から生まれる」/「最終章 最後の一着~あとがきにかえて~」
本書は『ENGINE』2008年3月号~2010年12月号、2011年2月号に連載された『反合理主義的服装術』に加筆訂正をしたものです。
表紙イラストは小林泰彦さん。
なれそめ
正直に言って、僕はテレビというものをほとんど見ません。テレビドラマを観ないから、芸能人の名前も分からないし、ましてや、テレビディレクターなる職業の人たちのことについて何も知りません。
ただ、ジュンク堂書店のファッションコーナーで見つけて、タイトルと表紙のイラストが気に入ったというだけの理由で購入し、そして、今ではすっかりとこの本を大好きになってしまった。
ただ、それだけのことなのです。
本の壺
「男のファッションはどうあるべきか?」ということについて、この本はストレートに答えてくれます。
今回は、その中の断片を3つだけご紹介してみましょう。
男のワードローブの基本は白いシャツ
大人の男が服を着たときに、他人からどのように見えるのが最も良いかということについて、著者は「きっちりとした格好の時にリラックスして見え、カジュアルな格好の時にだらしなく見えない」ことが基本中の基本だと言っています。
この言葉は、非常に分かりやすく大人のメンズファッションのポイントを言い当てています。
そして、真の男にとってワードローブの一番基本になるものとして、著者が考えているのがいわゆる「白シャツ」と呼ばれる、普通の白いシャツです。
中でも、オックスフォード地のボタンダウンシャツは、白シャツの中でも基本中の基本。
白シャツは決して高価でなくても、例えばブルックスブラザーズのポロカラーシャツのように、しっかりとした上質なアイテムを選ぶべきだと、著者は言います。
確かに、ブルックスブラザーズのポロカラーシャツは一万円少々で手に入りますから、五万円の超高級品を5枚買うよりも、ブルックスのシャツを5枚買った方が賢明だという主張は、そのとおりだと思います(実際、僕もそのようにしてシャツを揃えました)。
ポイントは、とにかくストイックに白色のシャツだけを買い続けること。
襟の型は、ボタンダウンの他にもレギュラー、ワイド、タブカラーなどの種類があるし、生地もオックスフォードだけではなく、ブロード、ポプリン、夏のリネンなど選択肢があります。
ただし、生地や形は変わっても色は白。
それが、著者のダンディズム的なこだわりなのです。
ボトムはグレイ・フランネルのクラシックなパンツ
白いシャツに合わせるボトムとしてベストマッチは「グレイ・フランネル」だと、著者は言います。
季節的には秋から早春までに限定されますが、中年過ぎの男にとって、グレイ・フランネルのパンツに白いオックスフォード地のボタンダウンシャツが基本中の基本。
グレイは「無関心」を装えるようになった中年男に最も相応しい色であり、フランネルという生地が、グレイの持つ冷たさを補ってくれる暖かみがあるというのが、著者の考え方であるわけです。
グレイ・フランネルのパンツは、細身のストレートかテーパードで裾幅は20センチ程度、丈は長すぎないように、ハーフクッションからワンクッションまで(著者はノークッションにすることが多いそうです)。
色はチャコール、ミディアム、ライトと3色揃えたい。
ごくオーソドックスなグレイ・フランネルのパンツと白いシャツの組み合わせが全ての基本となる。この組み合わせはカクテルで言えば良く出来たドライ・マティーニのようなものだ。(河毛俊作「一枚の白いシャツ―男、45歳からの服装術」)
ワードローブの中で生き続ける「絶対定番」
ラコステのポロシャツ。
鹿の子地の一番クラシックなデザインのやつで、著者は「古いものは20年は着ている」そうです。
白を中心に10色以上持っていて、長袖もあるけれど、やはり半袖の方が好きなんだとか。
ラルフ・ローレンやジョン・スメドレーも愛用。
ブルックスブラザーズのボタンダウンシャツは、誰もが認める絶対定番。
ラルフローレンのクルーネックセーター、ケーブル編みのカシミアスウェーターは、カシミアとしては買いやすい値段とのこと。
セーターはクルーネックが一番流行に左右されなくて、長く着続けられるそうです。
ラルフローレンこだわりのショールカラーカーディガンも絶対定番に認定したいアイテム。
絶対定番と呼べる靴はオールデンで、プレーントゥ、ウィングティップ、ペニーローファー、タッセル・スリッポンなど、黒とバーガンディを30年近くかけて揃えてきたと言います(うらやましい)。
J.M.ウエストンのクラシックなローファーとサイドゴアブーツも、著者にとっては絶対定番なんだとか。
時計はスポーツ系のものはロレックスの1970年代後半のデイトナと80年代後半のGMTマスターを使い続けていて、少しドレッシーなものとしてはカルティエのタンク・ウォッチとパティック・フィリップの古いモデル。
サングラスはレイバンで、80年代のティアドロップやウェイフェラー。
ブルックスブラザーズのパジャマも25年以上愛用している品。
その他、モンブランの筆記用具、ルイ・ヴィトンのクラシックなモノグラムシリーズの基本ライン、エルメスの小さな手帳などなど、ダンディになりたい人には憧れな大人の絶対定番が次々と登場しています。
こういう間違いないアイコン的なアイテムって、やはり大人としては憧れてしまいますよね。
読書感想こらむ
「♪喜怒哀楽はむやみに出すもんじゃない/ダンディは泣かない/例え哀しい時も/笑われたって蹴つまずいたって/意地は張ったまま/涙はハートの湖に沈めて/キミが振り向くような男になれるまで/背伸びしてでもムリをしろダンディ~」という斉藤和義(MANNISH BOY)のエンディングソングでお馴染みだった深夜ドラマ『俺のダンディズム』。
テレビを観ない僕が、その存在を知ったのは、放送終了して何年も経ってからで、アマゾン・プライムで発見したとき、あまりに面白すぎて、最初から最後まで一気に観てしまったというくらい、中年男には憧れのダンディなアイテムで溢れていた。
「ダンディ」という言葉になんて興味はなかったけれど、自分の好きなアイテムには、いつでもダンディズムという言葉がつきまとっていたような気がする。
男は年を取ると、いつの間にか「やせ我慢」をする存在になるらしい。
嫌いじゃないけどね、「やせ我慢」という言葉も。
まとめ
すべての望みが叶うとして、あなたはどんな服装で死にたいですか?
最期の瞬間まで、ブルックスブラザーズの白いオックスフォードのボタンダウンシャツにこだわりたい。
ダンディな男のダンディズム入門。
著者紹介
河毛俊作(ディレクター)
1952年(昭和27年)、東京都生まれ。
フジテレビのディレクターとして活躍。
本書発行時は59歳だった。