読書コラム

2021年の読書体験を振り返る~庄野潤三の全著作読破から井伏鱒二デビューまで

コロナ禍の中、外出を控えているうちにすっかりと「趣味は読書」の人になってしまった。

おおかげで、過去には読むことのなかった作家や作品と出会うことができて、読書の幅はここ2年で格段に広がったことは間違いない。

コロナ一年目の2020年は、庄野潤三をはじめ、小沼丹や福原麟太郎、木山捷平、小山清など、未知の作家との出会いが多い、まさしくエポックメイキングな年となったが、今年2021年はそこまでドラスティックな変化はなかった。

むしろ、昨年の出会いの中で自分の琴線に触れた作家を深く読む作業に入ったのが、2021年だったと言えるような気がする。

その象徴が庄野潤三で、昨年の夏に出会ったこの作家の全著作読破という目標は、約一年かけて、今年の秋に達成することができた。

この「一年かけて」というのは、読書を仕事にしたくない(義務感で読みたくない)、あくまでも日常の趣味としてゆっくり楽しむことを殊更に意識した結果で、とにかく読破だけを目標とするのであれば、自分のようなサラリーマン読者であっても、半年もかからなかっただろう。

全作を読み終えた今、既に二読、三読を繰り返している作品もあり、庄野潤三は今後も読み続けていきたい作家である。

次によく読んだものといえば、福原麟太郎の随筆集がある。

昭和期に多くの著書を残したこの随筆家の作品も、現在では読まれる機会が少なくなってしまったようだが、充分に現代の世に通用するだろうと思われるものが多い。

全著作読破は、おそらく難しいだろうと思われるが、機会を見つけて少しずつ読み進めていきたい。

同様に、昭和期を代表する随筆家として永井龍男の作品にも、今年はよく親しんだ。

全容が分からないくらいにたくさんの随筆集を残しているらしいから、こちらも来年の楽しみのひとつである。

来年の楽しみと言えば、最近になって井伏鱒二の随筆集を読むようになった。

あまりに大御所すぎて敬遠していたところがあったが、井伏鱒二の随筆の世界は、やはり深くて温くて居心地が良い。

2022年は本格的に井伏鱒二を読んでみたい。

先を急いでしまったが、2021年の話に戻ると、村上菊一郎や青柳瑞穂、山内義雄、奥野信太郎、戸板康二など、いわゆる小説家ではない人たちの随筆集も、今年おもしろかったもののひとつである。

こうした人たちの作品というのは、時代が経ってしまうと、小説家の作品以上に読みにくくなってしまうようだが、過去の中に埋もれさせてしまうのは惜しいと思う。

講談社文芸文庫や中公文庫などで積極的に発掘してもらいたいところだが、こうした文庫は、文庫そのものが入手困難になってしまうので、あまり意味がない。

戦後に刊行された随筆集は、古書店を探せばまだまだ手に入るし、多くの場合、講談社文芸文庫よりも値段が安かったりするから、僕は積極的に当時の単行本から入手している。

文庫ではなく単行本で古本を買うようになったということも、2021年の特徴のひとつと言えそうだ。

文庫だけで探していたときよりも、古本の世界(読書の世界)は圧倒的に広くなったし、僕の居住空間は、この一年間で確実に狭くなった。

今後(2022年)は、蔵書の管理が大きなテーマとなることは間違いない。

一方で、こんなに新刊(というか新作)を読まなかった年も珍しいだろう。

読書の世界が広がった分だけ、読書の選択肢も多くなったわけであり、限られた読書の時間を、僕は昭和中期の随筆集にほとんど投資していた、ということになる。

サラリーマン読書家である以上、本に費やすことのできる時間には自ずと限界があるのだから、いかに時間を有効活用するかということを、今後も意識していきたい。

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じゅん
庄野潤三生誕100年を記念して、読書日記ブログを立ち上げました。庄野潤三さんの作品を中心に、読書の沼をゆるゆると楽しんでいます。