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くろすとしゆき「トラッド覚え書」クラシックなファッションの教科書

くろすとしゆき「トラッド覚え書」クラシックなファッションの教科書

くろすとしゆきさんの「トラッド覚え書」を読みました。

昭和時代のファッションの勉強って楽しいですね。

書名:トラッド覚え書
著者:くろすとしゆき
発行:1976/6/20
出版社:婦人画報社

作品紹介

「トラッド覚え書」は、くろすとしゆきさんによる「正統派ファッションガイド」の本です。

婦人画報社の「メンズクラブ新書」シリーズ。

「はじめに」によると「『メンズクラブ』誌上で既に発表したもの、ニッポン放送で二年間放送した『トラッド・ショップ』のテープからも、面白そうな話題をピックアップして付け加えた」とあります。

昭和中期のメンズファッションの教科書。

目次///《カラー》「春」ブレザー/コットン・スーツ/レイン・コート/テニス/「夏」サッカー・ジャケット/ホワイト・スーツ/バミューダ・ショーツ/ヨット/「秋」アラン・プルオーバー/カントリィ・スーツ/リバーシブル・コート/フィッシング/「冬」ノーフォーク・ジャケット/ダブル・ブレザー/チェスターフィールド/サイクリング///《第一章 トラッド・ワードロープ》ディックのワードローブ/ブレザー/コート/アスコット・シャツ/スリップ・オーバー/インディア・マドラス/タンク・トップ/ショーツ/リーファー・ジャケット/アイビー・ブレザー/ベステッド・ジャケット/ノーフォーク・ジャケット/トップコート/ブレザー十二ヶ月///《第二章 トラッド覚え書》「トラッド博物誌」スコティッシュ・ツイード/ストライプ・シャツ/ハンティング・キャップ/バクルド・シューズ/レジメンタル・ストライプ・タイ/雨傘/ホワイト・バック/ポロ・シャツ/ブレザー/鞄/タターサール/アラン・スエター/「トラッド覚え書」腕時計/古時計/石けん/馬具/カラリング・ブック/チョコレート/灯り/アイビー/ハシカ/フットボール/マナー/専門店/流行/ツイード・ショップ/万年柄/靴ひも/尾錠/肘当て/捨てボタン/ボタン・ダウン///《第三章 トラッド・ツアー・リポート》スコットランド紀行 PART1/スコットランド紀行 PART2/ボクの探した英国のアンティック/ニューヨークのメンズ・ショップ/ブルックス・ブラザーズ物語///《第四章 トラッド・ショップ》「気になるアメリカ人」ハワード・ヒューズ/ヘミングウェイ/マリリン・モンロー/フランク・シナトラ/「トラッド・エンサイクロペディア」アーガイル/バミューダ・ショーツ/クレスト・タイ/デザート・ブーツ/エルボウ・パッチ/フランネル/ギャバジン/ハウンド・ツース/アイビー・キャップ/ジャンパー/ニット・タイ/レタード・カーディガン/モカシン/ニューポート/オックスフォード/ペンシル・ストライプ/キルティング/ランチ・コート/スウィング・トップ/トレンチ・コート/アンダー・ウェア/Vゾーン/ウィング・チップ/ヨットパーカー/トラッドQ&A///《カラーページ解説》「春」ブレザー/コットン・スーツ/レイン・コート/テニス/「夏」サッカー・ジャケット/ホワイト・スーツ/バミューダ・ショーツ/ヨット/「秋」アラン・プルオーバー/カントリィ・スーツ/リバーシブル・コート/フィッシング/「冬」ノーフォーク・ジャケット/ダブル・ブレザー/チェスターフィールド/サイクリング

流行を追いかけることだけがおしゃれではありません。少なくとも男性の場合には、いわゆるT・P・Oにふさわしい良識ある服装がのぞましいわけですが、本書は、おしゃれの正道を教えながら、しかも全篇にわたって楽しく読める気楽なファッション・ガイドブックです。今、男子服の正統派コーディネーターとして定評のある、くろす・としゆき氏のこの快著を参考にして、あなたの服装生活をより豊かなものにしてみてください。

なれそめ

僕は古い(というよりも時代遅れの)文学作品を読むことが好きです。

特に最近は、終戦直後から高度経済成長期くらいまでの、いわゆる「昭和中期」と呼ばれる時代に刊行された小説や随筆を読むことが多いのですが、この時代に書かれた作品には、現在では使用されていない言葉が登場することがあります。

それは、時代風俗を反映する文学作品としては極めて当たり前のことなのですが、言葉の意味が分からないと、作品を十分に理解できていない恐れがあります。

ということで、昭和の風俗に関する実用書を見つけたときに、僕は小説の文庫本なんかと一緒に買って帰ることが良くあります。

文学作品を理解するための参考書みたいなものですが、純粋に昭和の文化や風俗が好きだということでもあります。

とりわけ、ファッション関係のガイド本は「クラシック回帰」の流れが来ている今、実用的にも参考になりそうですね。

本の壺

心に残ったせりふ、気になったシーン、好きな登場人物など、本の「壺」だと感じた部分を、3つだけご紹介します。

僕はね、秋と聞くと真っ先に思い起こすのはツイードだなあ。

他人のことはわからないけれど、僕はね、秋と聞くと真っ先に思い起こすのはツイードだなあ。あのツイードってやつは、どうしたって春のムードじゃないよ、秋そのものだね。そうは思わないかい?(「ディックのワード・ローブ」)

時代の流れの中で、受け継がれていくものもあれば、消えていくものもある。

そういう意味で、この「ツイード」というやつは、時代の流れの中で生き残ってきたファッション素材のひとつということができそうです。

近年のメンズファッション界では、特に「クラシック回帰」などという流行が来ていて、古くさいファッションが流行っているので、ツイード人気もますます高まっているようです。

もちろん、永遠の定番というよりは、浮かんだり沈んだりしながらも、どうにか生き残っているということだと思いますが、、、

トラディションの美しさとは、完成された美しさと解釈すべきではないだろうか。

そこで見なおされるのは、ヘリンボーン、ペンシル・ストライプ、チョーク・ストライプ、グレン・プレイド、ハウンド・ツース、ウインドゥ・ペンなど、誰もが名前を耳にしただけで柄が頭に浮かんでくる「万年柄」である。(「トラッド覚え書」)

「万年柄」という言葉を、そもそも僕は初めて知りましたが、あるいは、アパレル業界では、現在でも通用する業界用語なのかもしれません。

簡単に言えば、流行に左右されない定番デザインのことで、「ヘリンボーン、ペンシル・ストライプ、チョーク・ストライプ、グレン・プレイド、ハウンド・ツース、ウインドゥ・ペン」などという言葉は、確かに現在のファッション雑誌でも、普通に用いられている言葉のようです。

本書は1976年(昭和51年)に刊行された45年前の本ですが、ほぼ半世紀近くも昔の時代に定番だとされているデザインが、現在も生き残っていることに、むしろ、ほっとしてしまいます。

「万年柄」という言葉は嘘ではなかったんだなあという意味で(笑)

ベッドで飲むお茶がモーニングコールとはしゃれている。

朝八時にメイドが紅茶(前夜モーニングコールをたのんだ時に朝はティーかコーヒーかたずねられた)とビスケット二枚をオークのお盆ではこんでくれる。ベッドで飲むお茶がモーニングコールとはしゃれている。(「スコットランド紀行 PART2.」)

本書では、著者のくろすさんが「トラッド」の本場スコットランドを訪れたときの紀行文が収録されていて、これが意外と楽しい読み物となっています。

ファッション好きの人の目線によって、50年前のスコットランドは、どのように綴られているのか。

ページ数は決して多くはありませんが、昭和中期の外国紀行文として、ここに記録しておく価値はあると思います。

できれば、こうした紀行文だけで、もっとしっかりと読みたいと思える内容でした。

読書感想こらむ

トラッドなファッションとは何か?

その問いに対する答えが、この本の中にはあります。

そして、トラッドなファッションである以上、そこに書かれている情報は、現在でも十分に通用するもののように思われます。

むしろ、当時の情報を現在のファッションに生かすことが、つまり「トラッド」ということなのかもしれません。

「グレー・フランネル・スーツ」の解説では、「どぶねずみ色の服」で「サラリーマンのいちばん目立たない制服のことを意味する」という説明に続いて「どぶねずみでいいではないか」「男はピーコック・カラーの服で勝負するのではない。中身なのだから」などといううれしいフレーズがあったりします。

時代遅れの実用書の中にも、意外と役に立つ情報があるし、気持ちの良い言葉も綴られているということですよね。

まとめ

くろす・としゆきさんの「トラッド覚え書」は、昭和中期に書かれたトラッド・ファッションの教科書です。

クラシックなオシャレに興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

著者紹介

くろす・としゆき(メンズ・ブティック・オーナー)

1934年(昭和9年)、東京生まれ。

「ヴァン・ヂャケット」で商品企画を担当後、「クロス・アンド・サイモン」設立。

「トラッド覚え書」刊行時は42歳だった。

ABOUT ME
じゅん
じゅん
札幌在住の文化系社会人。文学散歩とカフェ読書を楽しんでいます。札幌中央図書館の2階辺りに棲息中。