名著・旧刊

田渕義雄「フライフィッシング教書」読んだら釣りに行きたくなる

田渕義雄「フライフィッシング教書」魚釣りが人生を豊かにしてくれる

すべての釣りの中で最も難しくて最も楽しくて、そして最もカッコイイ。

タイイングを始めると、釣りに行かない日まで生活の中に釣りがある。

そんなフライフィッシングを始めるための教科書です。

書名:フライフィッシング教書
著者:シェリダン・アンダーソン、田渕義雄
翻訳者:田渕義雄
発行:1979/2/1
出版社:晶文社

作品紹介

「フライフィッシング教書」は1979年(昭和54年)に出版された魚釣りの本で、「初心者から上級者までの戦略と詐術のために」というキャッチコピーがセットになっています。

著者は田渕義雄さんとシェリダン・アンダーソンさんの2人。

フライフィッシングのノウハウ本ですが、親しみやすいイラストレーションと捻りの効いた警句が多くて、読み物としても十分におもしろい構成となっています。

著者の田渕義雄さんは「今度きみが釣行する時、きみはこの本を持っていかなければなりません。そして必ず、少なくとも2回はこの本を熟読しなさい」と言っています。

「これからフライフィッシングを始めたい」と考えている人に役立つ情報だけではなく、「フライフィッシングを極めたい」と考えている上級者に向けたマニアックな情報も満載。

フライフィッシングに出かける前に読んで気分を高めるにはぴったりの本ですよ。

なれそめ

僕が「フライフィッシング教書」を読むことになったのは、もちろんフライフィッシングに関する知識と技術を高めたいと考えたからです。

フライフィッシングに興味を持ち始めた頃、一番最初に手にした本が「フライフィッシング教書」だったような気もします。

周りにフライフィッシングをやっているような師匠もいなかったし、紀伊国屋書店の釣りコーナーで「フライフィッシング教書」を見つけた瞬間に「これだ!」と思いました。

著者の田渕義雄さんもシェリダン・アンダーソンさんも知らなかったけれど、イラスト満載で分かりやすそうに思えたから。

釣りは人生を豊かにしてくれると言いますが、この本も僕の人生をすっかりと豊かなものにしれくれました。

本の壺

本書は大きく3章から構成されています。

カーティス・クリーク宣言書

本書のメインは何と言っても、シェリダン・アンダーソンの著作「カーティス・クリーク宣言書」の翻訳版です。

アメリカ的なイラストレーションに、非常にきめ細かい解説をつけて、フライフィッシングとは何か?ということを紐解いていく様子は、まるで人生とは何か?を紐解く哲学書のような雰囲気。

確かに釣りと人生は似ているけれど、だからと言って、決して難解な内容ではありません。

寝転がってお菓子でも食べながら読み進めたくなる楽しい読み物に仕上がっています。

読み物として優れた書籍ですが、フライフィッシングの技術書としても十分な情報が掲載されています。

日本のカーティス・クリークのために

パート2の「日本のカーティス・クリークのために」では、田渕義雄さんが日本の風土にマッチしたフライフィッシングについて、具体的に解説しています。

フライロッドやフライライン、リーダー、フライリールといった釣り道具の選び方、フライ・キャスティングの方法、フライやフライ・タイイングなど、実際のフライ・フィッシングに役立つ情報がびっしり。

初めてフライフィッシングに挑戦しようと考えている人にも優しい解説。

もちろん、上級者の人にも「目からうろこ」なアイディアが隠されています。

釣り人に求められるマナーにもしっかりと触れられています。

カーティス・クリークのほとりで

最後のパート3「カーティス・クリークのほとりで」は、田渕さんが実際に釣りを楽しんでいる川や湖を紹介するフィールド・ガイドです。

千曲川や多摩川、日光湯川、中禅寺湖などの身近なところから、北海道やユーゴスラビアの川まで、実に多様なフィールドでの経験が描かれています。

釣りガイドというよりも、優れた釣りエッセイとして読みたいコーナーですね。

読書感想

「フライフィッシング教書」には、フライフィッシングに関する様々な教訓が提示されています。

「フライ・キャスティングについて、もし、簡単だ!なんて言うんだったら、キミのやり方はたぶんまちがっている」という暗示的なものや、「フライフィッシングは、そうではないんだという噂にもかかわらず、至上の目的はやっぱり魚をつかまえることだ」なんていう哲学的なものまで、言葉は幅広く、奥が深い。

こういう本を読むと、釣りというのは技術的なことだけではなく、精神的な部分が大切なんだなと思います。

釣りを上手になりたいことは確かだけれど、釣りを通して自分を磨くことができるということが、魚釣りの本当に重要な魅力なのかもしれませんね。

フライフィッシングには、そういう魚釣りの精神修養的な部分が強いのかもしれないと、この本を読みながら思いました。

あざむけ、だませ、ごまかせ、目をくらませろ、迷わせ、誘惑しろ、罠にかけろ、一杯くわせろ、おびきだせ。警戒して、用心深く、おくびょうに、注意深く、慎重に、抜け目なく、周到に、油断しないで。(田渕義雄「フライフィッシング教書」より)

まとめ

「フライフィッシング教書」は永遠の教科書。

そして、釣りに行かない週末を楽しく過ごすための心の友でもある。

釣りを愛する者のバイブルとして。

著者紹介

シェリダン・アンダーソン(芸術家)

「カーティス・クリーク宣言書」の著者であるシェリダン・アンダーソンさんは、釣り師で、芸術家で、放浪者。

倫理的なる仕事への永遠の敵対者でもあります。

1970年代っぽいなあ(笑)

田渕義雄(作家)

「カーティス・クリーク宣言書」の翻訳者でもある田渕義雄さんはフリーランスのジャーナリスト。

見かけ以上に嫌らしいこの国の組織社会からの、典型的な落ちこぼれ。

今は釣り師でキャンパーでオートバイ乗りという「だめなナチュラリスト」です。

田渕義雄さんは、2020年1月30日にご逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

ABOUT ME
じゅん
じゅん
札幌在住の文化系社会人。文学散歩とカフェ読書を楽しんでいます。札幌中央図書館の2階辺りに棲息中。