読書感想文

ロフティング「ドリトル先生のサーカス」動物への愛情とユーモアの共存

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ヒュー・ロフティング「ドリトル先生のサーカス」読了。

長編物語だが、エピソードによっていくつかのパートに分けることができる。

動物たちを養う資金繰りのために、ドリトル先生はサーカス団に加わるが、ドリトル先生はサーカス団に不満がある。

それは、動物たちの生活環境が決して快適なものではないからだ。

中でも、ドリトル先生は、アラスカで夫と離れ離れになってしまったオットセイのソフイーに深く同情して、ソフィーを逃がす決意を固める。

しかし、遠い海までオットセイをかくまって一緒に移動することは簡単なことではない。

二人は辻馬車に乗ったりしながら、何とか海岸までたどり着き、ドリトル先生はオットセイを海へ逃がしてやることに成功する。

このオットセイの脱走劇が、『ドリトル先生のサーカス』の中で最も大きなエピソードとなっている。

「ドリトル先生のサーカス」岩波少年文庫「ドリトル先生のサーカス」岩波少年文庫

ところが、オットセイを海へ放り投げた瞬間を目撃されたドリトル先生は、女性を海へ投げ込んだものと勘違いされて、牢屋に入れられてしまう。

ドリトル先生を救ってくれたのは旧知の友人だったが、ドリトル先生は、この友人が趣味にしているキツネ狩りがおもしろくない。

キツネたちに知恵を授けたドリトル先生は、とうとう、この地方におけるキツネ狩りを廃止にまで追い込んでしまった。

サーカス団の元へと帰る途中、ドリトル先生は、引退した馬車馬が余生を過ごすのに最適の牧場を見つけて、せっかく貯めたお金をつぎ込んで、この牧場を購入し、年老いた馬たちのために解放してあげる。

ようやくサーカス団の元へ戻ったドリトル先生は、楽しい動物劇を考案して大人気を博すが、稼いだお金を全部、悪い団長に持ち逃げされてしまう。

やむなく、サーカス団の団長になったドリトル先生は「ドリトル・サーカス」を立ち上げて、従来のサーカス団とは全然違う、観客も動物も楽しく過ごすことのできるサーカス団を実現する。

ドリトル先生シリーズでは、タイトルが必ずしも内容と一致していない場合があるが、本作ではサーカス団での活動を基本としながらも、サーカス以外のエピソードも多く含まれているところが、特徴のひとつとなっている。

「ドリトル先生のサーカス」岩波少年文庫「ドリトル先生のサーカス」岩波少年文庫

サーカス周辺のエピソードが物語の内容を膨らませて、最後にはサーカス団の活動を充実させるという仕掛けなので、長編物語として最後まで楽しく読むことができた。

もっとも、ドリトル先生がオットセイを逃がす旅に出ている間、ダブダブやトートー、ジップ、ガブガブといった、いつものメンバーが登場しないのは、少し寂しい。

シリーズ最初からの読者にとって、これらの動物たちは既にドリトル先生の家族であって、彼らのいないドリトル先生物語は、もはや成立し得ないようである。

時系列が不明な「ドリトル先生物語シリーズ」

ところで、「ドリトル先生のサーカス」は、岩波少年文庫では「ドリトル先生物語シリーズ」の4作目の作品となっているが、3作目の作品である「ドリトル先生の郵便局」からは、直接的にはつながっていないように感じられる。

作品冒頭では「アフリカの長い旅がすんで、やっと『沼のほとりのバドルビー』にある小さな家に帰ってきました」とあるが、「アフリカの長い旅」が一作目の「アフリカゆき」を指すのか、「郵便局」を指すのか、明確にはされていないようである。

つまり、ドリトル先生物語は、あまり時系列ということを意識しないで読むことがコツだということだ。

細部にこだわるよりも、それぞれの物語に登場するエピソードを素直に楽しみたい。

書名:ドリトル先生のサーカス
著者:ヒュー・ロフティング
訳者:井伏鱒二
発行年月日:1952/1/15
出版社:岩波少年文庫

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じゅん
庄野潤三生誕100年を記念して、読書ブログを立ち上げました。村上春樹さんと庄野潤三さんの作品をゆるゆる楽しんでいます。