名著・旧刊

沼田元気「ぼくの伯父さんの東京案内」好きなことに変換するライフスキル

沼田元気「ぼくの伯父さんの東京案内」中年を楽しく生きる人生の教科書

「ぼくの伯父さんの東京案内」は東京案内という形のライフスタイルブックです。

この本を読むと、大人になること(中年になること)が全然怖くなくなります。

管理人にとって人生の教科書です。

書名:ぼくの伯父さんの東京案内
著者:沼田元気
発行:2000/7/1
出版社:求龍堂

作品紹介

「ぼくの伯父さんの東京案内」は2000年に求龍堂から出版されました。

著者は喫茶店やマトリョーシカの研究家としても有名な沼田元気さん。

タイトルに「東京案内」とありますが、実際には大人のためのライフスタイルブックです。

実際に本を開いてみると、東京案内らしい東京案内なんてありません。

路線バスに乗ったり、古本屋に行ったり、喫茶店に行ったり、商店街で散歩したり。

東京という街を舞台に生きる中年男性の日々の暮らしが綴られているだけです。

そう言えば、表紙にもちゃんと書いてありました。

もう若くはないが老人になるには少し間がある。まだ一寸欲望も残っており、幸いそれをコントロールする力もある。人生で一番長く、そして楽しい中年という時間の伯父さん的生き方入門書。(沼田元気「ぼくの伯父さんの東京案内」より引用)

東京という街でいかに人生を楽しく生きるか。

大人の男性が「中年」という時代を自分らしく生きるためのヒントが、この本には詰まっています。

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なれそめ

管理人は「ぼくの伯父さんの東京案内」の作者である沼田元気さんの大ファンです。

いつからファンになったのか、どこで沼田元気さんを知ったのか、今では何も覚えていません。

ただ沼田元気さんの著作が好きで、おそらくこれまでに出版された本は全部持っているはずで、なんなら沼田元気さんが手放した沼田さんオリジナル蔵書印入りの古本とか、沼田さんオリジナル請求書とか、どうでもいいものまで収集する始末。

守備範囲は広くなったけれど、沼田元気さんの生き方に共感してきたという根っこの部分だけはずっと変わっていなかったと思います。

そんな沼田さんファンとなったきっかけが、おそらくこの「ぼくの伯父さんの東京案内」です。

この本と出会ってから長い時間が経ってしまったけれど、この本は今もまだ僕にとって人生の教科書のままです。

本の壺

「好きなもの」にこだわってみる

「ぼくの伯父さんの東京案内」は、語り手である「ぼく」が、東京で暮らす「伯父さん」の生き方を紹介する形で綴られています。

「ぼくの伯父さん」は下町にある古い長屋で暮らしていて、都内を走る路面バスに乗って終着点まで旅をしたり(伯父さんはそれを「バス散歩」と呼んでいる)、古本屋で買い込んできた古本を老舗喫茶店の珈琲を啜りながら楽しんだり、時にはわざわざ東京都内にある古い旅館に泊ってみたり、とにかく毎日を自由に生きています。

「伯父さん」の行動の原点はすべからく「好きなコトを捜すこと」から始まっていますが、それは、雨上がりのにおい、平日の昼寝、ソノシート、トワイライトタイム、チロルの三角チョコ、北欧のクリスマス、図案辞典、木陰のプールサイド、プラネタリウム、お葬式(お通夜はイヤ)、夜行列車、お月様にまつわる童話や伝説、雨の日のエアポート(どこか異国の小さな空港)、旅の前の日、ハーフサイズのカメラ(出来上がった写真をベタ焼きで見ること)、古いB級映画のサントラなどなど際限なく続きます。

自分の好きなものを語るだけで、こんなにも次から次へと言葉が浮かんでくるとしたら、それは凄いことだと思います。

好きなものがたくさんある分だけ、「伯父さん」は誰よりも人生を謳歌しているということです。

人生を楽しむための基本は、自分の好きなことを探して、そして、そのことにこだわってみることなのかもしれませんね。

自分の好きなもの100個をすぐに言える人生って、きっと楽しいはずだから。

自分の好きなものを100個考える

「人生」を「趣味」にしてみる

多くの中年男性にとって「趣味を持つ」ということは、なかなか難しい課題のようです。

「仕事が趣味だ」なんていう昭和的美談だけでは、既に生きていけない時代になってしまいました、、、

好きなことで生きている「伯父さん」にとっては、生きることそのものが、もはや趣味みたいなもので、それは「好きではないことで人生を無駄にしたくない」という人生哲学に基づいて導き出されています。

例えば、トイレットペーパーのような日用品を買い物に行くときも、大好きな「古い商店街」を歩いて、大好きな「小さな雑貨屋」さんで買い物をすれば、それはたちまち「趣味」になります。

どこかへ移動するときも、大好きな「路線バスの旅」を楽しんでしまえば、それも立派な趣味。

「伯父さん」の生活は、こうして生きることそのものが趣味になっているのです。

少し発想を転換するだけで、僕たちの日常生活も、意外と簡単に「趣味」にできるのかもしれませんね。

日々の暮らしを「趣味」にしてしまう

古いハーフサイズカメラを使ってみる

中表紙には「カメラとペン 沼田元氣」とあります。

本書の各ページの構成は、上段に写真、下段に文章というデザインで、確かにたくさんの写真が使われています。

どの写真もすごく懐かしい雰囲気で、とても2000年に発行された本とは思われないくらいにノスタルジック。

写真の秘密は、沼田元気さんの使っているカメラが、昭和中期に製造されていたハーフサイズカメラだからだと思われます。

沼田さんは、ハーフサイズの一眼レフカメラであるオリンパスのペンFを愛用しているので、この本に掲載されている写真の多くは、ペンFで撮影されたものでしょう。

現代の日常風景を古いフィルムカメラで撮るだけでこんなにも懐かしくなるんだということを、沼田さんは教えてくれます。

何も語らず、ただ写真を示すだけで。

古いハーフサイズカメラで写真を撮ってみる

読書感想

先述したように、この本は僕にとって人生の教科書的な存在の1冊です。

この本から教えられたことは数多いし、この本をきっかけとして始めたこともまた少なくありません。

沼田さんのライフスタイルの基本は、「好きなことだけ」をして暮らすということ。

もちろん、働いてお金を得ている以上、「好きではないこと」に直面することも多いと思いますが、沼田さんは発想の転換をもって、いかなることも「好きなこと」に変換してしまい、「好きではないと思えること」さえ「好きなこと」として楽しんでしまいます。

「好きなことしかしない」という「選択の人生」ではなく、「好きなことに変えてしまう」という「変換の人生」が、沼田さんのライフスタイル。

これは、すごいライフスキルだと、僕は思います。

「選択の人生」は普通のビジネスマンには不可能だけれど、「変換の人生」だったらワンチャンがある。

「伯父さん」は趣味の喫茶店を楽しんだ後で、散歩をしながら休憩し、散歩で気分転換できたら、再び趣味の喫茶店へと舞い戻ります(散歩して疲れたから喫茶店で休むのではない)。

散歩と喫茶店という主従が逆転しているのが、まさに「伯父さん流」の転換の人生。

生きるために必要な七面倒くさいことを全部楽しみに変換することができたら、それが「人生イコール趣味」ということなのかもしれませんね。

僕もそんな人生を送ってみたいと、ひそかに目論んでいる一人なのです。

伯父さんは、いつでも逆境に強い。それは、自分の人生を愛しているということでもある。何でもそうだが、そうせざるを得ない時こそ、実にその中で楽しむすべを見付け出せるものなのである。そうして無いものねだりをせずに、今あることを、好きなことや欲しいものに変える力こそ、生きる力なのだ。(沼田元気「ぼくの伯父さんの東京案内」より引用)

まとめ

「ぼくの伯父さんの東京案内」は「東京案内」の名を借りた、中年男性のためのライフスタイルブック。

人生は自由で楽しいものなんだということを、改めて思い出した。

いつか大人になるかもしれない若い世代の方々にもお勧めです。

著者紹介

沼田元気(写真家詩人)

写真家にして、カフェ(喫茶店)や伝統こけし、マトリョーシカの研究家としても知られており、「写真家詩人」や「イコイスト」など自称の肩書き多数あり。

代表作に「憩写真帖」「こけし時代」など。

1958年(昭和33年)生まれの62歳。鎌倉出身。

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ABOUT ME
じゅん
じゅん
札幌在住の文化系社会人。文学散歩とカフェ読書を楽しんでいます。札幌中央図書館の2階辺りに棲息中。