庄野潤三の世界

「& Premium特別編集 あの人の読書案内。」で庄野潤三の小説を見つけた

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「&Premium特別編集 あの人の読書案内。」読了。

内容紹介には「本誌は『&Premium』2019年10月号「あの人が、もう一度読みたい本」を中心に、2015年2月号「センスのいい人は、何が違う?」、2017年1月号「贈り物と、絵本」、2018年10月号「素敵な人になるために、どう生きるか」、2018年12月号「エレガンス、ということ」、2020年2月号「心と体が、あったまること」に掲載した読書企画を再編集・増補改訂したもの」とある。

読書の世界を新しく広げる上で、こうした雑誌(ムック本)の読書案内特集は本当に役に立つ。

宇宙のように広大な本の世界を旅するときには、こんな本が星図のような案内図の役割を果たしてくれることになるのだが、今回のテーマはひとつだけ。

それは「&Premium特別編集 あの人の読書案内。」の中で「庄野潤三の本は紹介されているのか?」ということが、そのテーマで、「庄野潤三の本も紹介されています」というのが、その答えだ。

さて、アンドプレミアムの中では、庄野潤三のどんな作品が紹介されているのだろうか。

人の温もりとあふれる愛情で綴られた品のある手紙。

最初に取り上げられていたのは、庄野文学晩年を代表する「夫婦の晩年シリーズ」の記念すべき第一作目の作品である『貝がらと海の音』。

本ムックでは、様々な著名人が自分の愛読書を紹介するというスタイルで構成されているが、『貝がらと海の音』は「私に、エレガンスを教えてくれた本。」の中で、山本ふみこさん(随筆家)の推薦によって紹介されている。

日常には脅かされる。それを知る老夫婦の、ささやかだけれど穏やかな暮らしを静かな筆致で綴る小説。「本当のエレガンスには人の温もりと愛情が不可欠。本書にはそれがあふれています。例えば一家の長女がしたためた手紙にそれを感じます。エレガンスというとおしゃれを連想しがち。それも大事ですが、やはり中身がないと見た目のエレガンスも薄まってしまう。人の心や暮らしにも同じことが言えます」(山本ふみこ)

山本ふみこさんからはもうひとつ、山田太一『異人たちとの夏』も紹介されていて、庄野潤三と山田太一、すごく良いセンスだなあと感心。

なお、本書では新潮文庫版が紹介されているが、同文庫の『貝がらと海の音』は既に入手困難なので、小学館の「P&D BOOKS」シリーズがお勧め。

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子育ては自分の子ども時代を再び体験できる

「&Premium特別編集 あの人の読書案内。」の中で、もう一冊、庄野潤三の本を見つけた。

モデルであり、昭和レトロな喫茶店好きとしても知られる菊池亜希子さんの推薦による『ザボンの花』だ。

ずっとこの本の世界に浸っていたくなる『ザボンの花』。私の母世代が子どもだった頃の家庭の日常を描いている長編で、矢牧家の人々はみんな好きなんですが、特にお母さんの千枝がいいんです。千枝のような母親になりたいし、私の母もこうだったと思って。子育てが楽しいと思うのは、自分の子ども時代のみずみずしい記憶や豊かで優しい気持ちを再び体験できるところ。(菊池亜希子)

菊池さんのコメントは実にしっかりとしていて、彼女は本当にこの小説が好きなんだなあということが、しっかりと伝わってくるし、物語の中の世界を「子育て」という自分の日常世界にしっかりと昇華しているところがすごいと思った。

阿佐谷の「古書コンコ堂」で撮影した古本屋の中の菊池亜希子さんの写真もいい。

菊池さんは他にミヒャエル・エンデ『モモ』と武田百合子『ことばの食卓』を「心の本」として紹介していて、庄野文学好きの人たちは読書の傾向も似てくるのかもしれないと思った。

なお、本書では、みすず書房「大人の本棚シリーズ」の『ザボンの花』(赤い表紙が美しい本)が紹介されているが、これは既に入手困難なので、講談社文芸文庫版をお勧めしておきたい。

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書名:&Premium特別編集 あの人の読書案内。
発行:2021/6/1
出版社:マガジンハウス

ABOUT ME
やまはな文庫
元・進学塾講師(国語担当)。庄野潤三生誕100年を記念して、読書日記ブログを立ち上げました。いつか古本屋を開業する日のために、アンチトレンドな読書ライフを楽しんでいます。